コペンハーゲン証券取引所買収される

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2004年11月24日

  • 佐藤 清一郎
1.スウェーデンのOMXがデンマークの証券取引所買収
2004年11月15日、スウェーデンに本拠地を置くOMX(OMXと言う会社は、取引所を運営するOMX Exchangesと金融システムソリューションなどを提供するOMX Technologyの2つからなっている)は、デンマークのコペンハーゲン証券取引所を買収することで合意したと発表した。OMXは、2003年9月、フィンランドの取引所を傘下におさめている。今回の動きは、これに次ぐものである。デンマークは、バルト海をはさんで、スウェーデンとは一体化した経済圏を構築しており、その意味では買収に対する違和感はない。今回の買収で、OMX傘下の証券取引所の時価総額規模は、ロンドン証券取引所の4分の1程度となる。

2.OMXは共通システムを武器に侵食
OMXは、証券取引所運営会社の顔を持っていると同時に金融システム会社の顔も持っている。ストックホルム、ヘルシンキ等の傘下にある取引所のシステムはもちろん、今回買収したコペンハーゲン取引所のシステムも、自社で開発したもの(名前はSAXESS)が使用されている。また、同様のシステムは、オスロやアイスランドの取引所にも提供されている。北欧の証券取引所は、OMXの独壇場である。将来的には、オスロ、アイスランドの取引所も、OMXに買収されていくと考えるのが自然な流れである。

3.今回の買収は実勢を確認しただけ
今回の買収報道は、欧州の証券取引所の勢力図に大きく影響を与えるものではない。と言うのも、前述のように、OMXは、共通システムにより、すでに北欧各国における証券取引所への実質的支配力を持っており、OMXのシステムから離脱することはできないし、また、そのメリットもないと思われる。今回の買収は、こうした状況を再確認したもので、OMXにとっての新たな勢力拡大との認識は正しくない。

4.証券取引所統合の動きではOMXとユーロネクストが積極的
欧州では、金融統合の流れの中で、証券取引所も再編の波に晒されているが、今回の発表は、こうした流れの一環である。欧州の証券取引所統合の動きを見ると、大きく2つのものがあるようだ。一つは、今回買収を発表したスウェーデンを拠点にしたOMXが中心となったもの、 ひとつは、パリを中心に活動しているユーロネクストである。OMXは、北欧やバルト海を中心に、いわば、欧州の北側から勢力を拡大している。具体的組織としては、北欧国の取引所が提携関係を結んでNOREXというものを創設しているが、OMXは、まさに、その中心的存在である。一方で、ユーロネクストは、ベルギー、オランダ、フランスの3ヶ国の取引所で始まった後、ポルトガルと提携するなど、欧州中部から南部にかけて勢力拡大を図っている。

5.欧州の証券取引所再編後の絵はまだ見えず
こうした勢力拡大の動きの一方で、欧州最大の時価総額を誇るロンドン証券取引所は、まだ、明確には参加していない。また、ロンドン程大きくないにしても、ほどほどの時価総額を持つ、ドイツ、イタリア、スペインなどの動向も不明瞭である。時価総額の規模で見ると、ロンドンは確かに欧州で最大だが、他の主要な取引所が連合体を作ってしまうと、当然、最大ではなくなる。ロンドンは、金融インフラに相当の比較優位があるため、欧州の統合の流れから置き去りにされると言うことは考えられないが、統合のやり方によっては、主導権を確保できないケースがでてくる可能性も否定できない。どういう戦略でくるのか?ロンドン証券取引所はもちろん、OMXやユーロネクストの今後の出方が注目される。


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