電話加入権の廃止と企業への影響

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2004年11月18日

情報通信審議会は、10月19日、NTT東日本・NTT西日本の固定電話に係る加入権(施設設置負担金)の廃止を認める答申をまとめた。今後は、NTTの経営判断により、段階的に価格の引き下げ・廃止が行われる見通しとなっている。

そもそも電話加入権(※1)とは、契約者が加入電話の提供を受ける権利のこと。電話加入権を取得するには、原則として「施設設置負担金」を支払う必要があり、契約者が支払った施設設置負担金は、電話網の敷設・維持工事費等に充てられることとなっている。しかし、携帯電話の普及により固定電話の契約者数は減少、電話回線に関する新規投資額も減少していることなどから、施設設置負担金の意義は薄れてきており、その見直しが検討されてきた。

電話加入権の価値は施設設置負担金とほぼ一体の関係にあるため、負担金が廃止されれば、電話加入権の価値にも影響を及ぼすこととなる。

施設設置負担金が廃止された場合、支払った額は返金されるのか?
一方で、固定電話契約者においては、「電話加入権は“財産”である」との認識が一般的である。こうした認識が浸透した背景には、電話加入権の売買や質権設定が可能とされていることがあるものと思われる。また、電話加入権の相続等を受けた場合には、相続税等の課税対象ともなっている。

しかし、NTTは、施設設置負担金を廃止したとしても、返金は行わない方針を示している。そもそも施設設置負担金は返還する扱いとはなっていないことなどが裏付けとなっている。また、携帯電話等の施設設置負担金に相当する「新規加入料」が値下げされた際、損害賠償訴訟(※2)が起こっているが、この時の損害賠償請求は棄却されており、こうした点もNTTには追い風になっているものと思われる。以上を踏まえると、施設設置負担金が返金される可能性は低いと言わざるを得ない。

しかし、携帯電話等の新規加入料が値下げされた当時とは、状況的に異なる点もあり、契約者から反発が起こるのは必至とみられている。

電話加入権の廃止に伴う企業への影響
電話加入権を保有する多くの企業では、電話加入権を資産計上している。施設設置負担金が廃止された場合、電話加入権の財産的価値は消滅するため、企業では、会計上、損失の計上を迫られることとなるだろう。また、税務上は、現行の取り扱いでは損失と認められないため、電話加入権の価値消滅分の損金算入を求める声が上がっている。1社当たりの影響額はそれほど大きくはないが、ほぼすべての企業に影響する問題である。

(※1)現在、電話加入権を取得する場合には、原則として72,000円(税込み価格75,600円)を支払う必要があるが、電話加入権を必要としない「ライトプラン」も提供されている。

(※2)この訴訟では、携帯電話契約の締結に際して「支払った新規加入料の回収をうかがわせる旨の規定」は存在しないことなどが、損害賠償請求棄却の理由とされた。

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