日本の住宅はなぜすぐに壊されるのか

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2004年11月01日

  • 原田 泰
日本の住宅は30年ごとに建替えられる。これに対してイギリスやアメリカでは住宅は100年以上も使われる。なぜ日本の住宅の寿命が短いのか。この理由として、石の家と木の家の違いという説明がなされることがある。しかし、アメリカの家も、大部分は木の家である。

ひとつの理由として個人の思い入れと要望が強すぎる家には他人は住みにくいということがある。あまりに広い3LDK、小さな部屋がたくさんある家、玄関が大きい家、室内に段差のある家、窓の少ない家、アンバランスにボウウインドウや吹き抜けの大きい家がある。それぞれに理由があったのだろう。子どもが少なかったり多かったり、客が多い家、室内に変化を付けたかった、壁に飾るスペースを取りたかった、それぞれに理屈があったのだろう。しかし、個人の要望にあまりにフィットした家は、違う個人には住みにくい。また、思い入れが自分の真の要望とそぐわないこともある。リクルート・フェローの藤原和博氏は「自分のイメージの中にある呪縛にダマされる」と言っている(『建てどき』情報センター出版局、2001年)。映画や写真の中の特定の憧れのイメージを強調した家は、全体のバランスを崩して住みにくくなってしまうというのだ。

10年もたたない家が「古家あり」とされて無価値となるのを見ることがある。古家とされた家を見ると、建てた人々の思いの切実さとその虚しさにしばらく心が痛む。

ではどうしたらいいのだろうか。同じ家族が連綿と住み続けることを前提として要求の多い家を建てても家族は変わる。様々な家があって、家族がその家々を住みかえれば家を壊さなくても良いのではないか。現に、貸家の寿命は持ち家の寿命よりも長いようだ。家が同じでも、家族が変われば様々な要望にいつまでもフィットできるからだ。家を借りることよりも家を持つことが有利な制度が、貴重な家の過剰な建て替えを生み出しているのではないか。

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