指定管理者制度への高まる期待と産みの苦しみ

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2004年09月28日

  • 経済調査部 市川 拓也
指定管理者制度は、地方自治法の一部改正により平成15年6月に公布、9月に施行されたもので、従来、直営で行ってきた事業も含め、公共団体又は公共的団体、50%以上出資団体(以下、公共団体等という)に限られていた管理委託を、他の民間への指定管理というかたちで門戸を開放する制度である。具体的には、福祉施設や体育施設、公園など多種多様な公的施設の管理が対象となり、既に実施例が出始めている。

指定管理者制度導入によって期待されるのは、競争原理導入による業務の効率化のほか、民間参入を通じたサービスの質的向上も期待される。いずれにせよ非効率が指摘されがちな官の領域を見直すことによって、最終的には住民の満足度が向上することを狙ってのことに違いない。規制改革や官製市場の開放が国の進める政策の大きな流れであるとすれば、指定管理者制度も民間委託、PFI導入とともに民間開放による活性化策のひとつと捉えられよう。

しかし、実際に推進する側の自治体の苦労は想像に難くない。新規の施設に関しては同制度が適用されることは勿論、従来の管理委託制度のもとで行われていたものに関しても、3年の猶予期間後には同制度が適用されていなければならないことから、時間的な余裕はあまりない。期限年度の当初となる平成18年4月からの導入を望むならば、平成17年度中の議会承認が必要であり、そのためには平成16 年度中には条例制定のための徹底的な検討が行われていなければならないはずである。

さらに公共団体等を民間と競わせるには、選定基準の明確化が必要であり、その説明責任も重要なポイントとなる。公募要件として従来の公的事業に近いものを求めれば新規に民間が入る余地はないであろうし、逆に過度の価格競争を強いれば、安かろう悪かろうの業者の手に管理が委ねられることも想定外ではない。また、既存の委託法人が選定から漏れた場合には、プロパー職員の扱いが問題となる上、出向職員の引き揚げにともなって自治体での若手職員の採用抑制が一層強化されることも考えられる。

昨今では「市場化テスト」が話題になっているが、こうしたなかで同制度の導入はそのためのステップとして大変興味深い試みである。ただし、自治体及び住民への影響の大きさを考えれば、単なる実験では済まされない。真に住民のニーズに適うよう慎重に検討を進めていくことが肝要である。

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