G7初参加、ゲストに徹する中国

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2004年09月27日

  • 肖 敏捷
10月1日は中華人民共和国の建国記念日である。55周年に当たる今年は、9月30日の夜に北京で盛大な祝賀行事が予定されている。例年、祝賀会では党、軍、政府の要人をはじめ、各界の有名人などが一同に会するが、今年は閣僚級の重要人物2名の欠席が確実とみられる。10月1日にワシントンで開催予定のG7財務相・中央銀行総裁会議に、中国の金人慶財政部長と周小川中央銀行総裁がゲストとして招かれたためだ。

近年、世界経済における中国の地位や役割が大幅に向上している状況を踏まえ、中国を主要国首脳会議(G8サミット)の正式メンバーにすべき、との声が関係国の間で拡がっている。しかし、発展途上国のリーダを自負しながら、「金持ちクラブ」に入会すれば、「中国脅威論」を煽ってしまうのではないかとの警戒感から、これまで中国政府はあまり乗り気ではなかった。今回、G7閣僚級会議に中国代表の初参加が実現したことは、G8サミットの正式メンバー入りへの第一歩と期待される。

今回の会議に中国代表の招聘が決まった背景には、中国とG7の関係を深めるとの大義名分もさることながら、やはりホスト国である米国政府の強い要請があったと考えられる。11月の大統領選を控え、米国の産業界が強く求めている人民元変動幅の拡大について、G7各国を動員して中国政府から譲歩を引き出すことが、米国政府の狙いだろう。議長を務めるスノー米財務長官は人民元改革の早期実現を求めると再三表明しているほか、テーラー米財務次官も記者会見で強い期待感を表明した。

しかし、原油高に加え、世界経済の牽引車である米景気の先行き懸念が高まる中、人民元の問題をG7各国の共通問題として取り上げる必要性は疑問である。また、ゲストとして招待されている中国は、過熱景気や人民元問題などについてG7各国と意見交換を行うというゲストの役割を果たすものの、踏み込んだ深刻な議論は極力避けたいというのが本音だろう。ただし、華麗なパーティに招待してくれたホストへの手土産は、ゲストとしての常識であるため、人民元為替制度を含む金融改革などへの取り組みについて、中国代表が新味のある発言を行う可能性も排除できない。

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