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DBMS製品多様化のシステム開発へのインパクト

2004年09月24日

中島 尚紀

最近の企業のシステム構築では、データベースを利用するのが一般的である。大半の企業システムの役割がデータの閲覧と処理であることを考えれば当然であろう。扱うべきデータ量と種類とが急激に増大してきているため、データベースを利用しなければ対応できないという事情もある。このような流れの中で、企業システムで利用されるデータベース管理システム(DBMS)の多様化が急激に進んでいる。

その背景は、以下のように整理できる。そもそも、DBMSはソフトウェアの中でも特に高度な機能をもった製品である。データの管理、物理領域(ディスクなど)の管理、複雑なSQLの解釈と実行、処理の最適化や高速化、複数処理の調整(ロックやロールバックなどによるトランザクション処理等)などを、適切に高負荷下でも実行する必要がある。このため、DBMSは複雑なプログラムを高速なハードウェアで動作させる形態で提供されてきた。このような特徴から、DBMS製品を高品質で提供できるベンダーは限定的となり、一時は企業レベルで利用される製品も淘汰が進んだ。

しかしながら、データベース構築の需要増に加えて、(1)必要な機能の多様化、(2)PCの高性能化やアーキテクチャの変化、(3)オープンソースソフトウェアの広がりなどにより、DBMS製品の種類が近年急激に増加してきている。(1)については、eコマースサイトの製品表示に適した「単純なデータ抽出を高速・大量に処理する点」に強みを持つDBMSや、OLAP(*1)などに適した「大容量かつ複雑なデータ分析を高速に処理する点」で強みを持つDBMSなどがその一例としてあげられる。これらのDBMSでは逆にトランザクション機能などに弱みをもつ。また(2)は、メモリを数GB、CPUキャッシュを数MB搭載したPCサーバが企業システムで利用されてきている状況があげられる。これにより、全てをメモリ処理で行えるDBMS、さらにはCPUキャッシュを意識したDBMSを選択することが現実的になっている。(3)については、オープンソースのデータベース製品の増加が見られる。今までは複雑なシステムであるが故に、オープンソースのDBMSは性能・機能面で実用に耐えると考えられていなかった。それが、開発コミュニティの発展や企業サポートの増加により、企業で利用できる品質や運用できる体制を整えてきた。特に、システムの安定性や拡張性より価格が重視される場合には、選択肢のひとつとなっている。

このような背景のもと、DBMS製品群は急激に多様化してきた。これらは、一般的なDBMSでは様々な機能が付加された結果、何でもできるが複雑すぎるという欠点を補うものである。機能を限定したり、強み弱みを明確にしたわけである。これにより、データベースの構成がシンプルになり、データベースの設計やチューニングが行いやすく、またDBMSの限界も見極めやすい。このため、メリットを生かすことができるそれぞれの分野で、利用が広がっている。

興味深いのは、データベース関連学会のカンファレンスでも同様の議論がなされていることである。すでにトランザクション処理ができているのだから、機能追加によりアプリケーションサーバと融合すべきであるという議論や、単機能でシンプルに動作することで動作が「予想できる」ようにすべきである、あるいはPCなどのアーキテクチャの変化に追随してDBMSのアーキテクチャも変更すべきであるという議論などがあがっている。これらの議論とDBMSの構築は全く別に行われているものの、はからずもこれらの議論に対応したDBMS製品が開発されている。これは、それぞれの構築ポリシーの確かさを裏付けているといえよう。

それだけに、これからのシステムの構築では、システムごとに必要となる要件を見極めてDBMSを選択してくことがより重要になる。とかくデータベースを利用するシステム構築では安全指向にならざるを得ず、さらに要件追加に対応できるように「何でも出来る一般的なDBMS」を選びがちである。そのような選択法にも理はあるものの、データやシステムの性格やライフサイクルを眺めた場合に、もっと良い選択肢も考えられる。適切な選択肢を選ぶことで、よりバランスの取れたシステムを構築できるだろう。

(*1)OnLine Analytical Processing 多次元データ分析を指す。複数の次元を持つデータを高速に、様々な切り口より分析する。マーケティングや財務分析などで利用されている。

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