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対外不均衡の構図

2004年09月22日

尾野 功一

日米貿易摩擦に揺れた80年代半ばのプラザ合意前後と同様に、現在も米国の経常赤字を軸とする対外不均衡問題が注目を集めている。

グローバル化の進展に伴い、対外不均衡に対する評価は以前よりも複雑化している。企業の海外進出が一段と進んだ今日では、一国の経済と当該国の企業活動を同一視することは容易ではない。例えば、現在の中国に対する米国の貿易赤字は、米国経済の視点と、中国へ進出し現地生産の製品を米国等へ輸出する米国企業の視点とでは、評価が異なってくる。また、経常赤字は海外からの資本流入を通じて国内貯蓄以上の投資が実施されていることを意味するが、これはグローバル化時代の経済成長の原動力と位置付けることが可能である。

このように、経済全体の枠組みを無視して経常赤字の存在自体をことさら問題視するのは必ずしも適切ではない。とはいえ、国際的な資本移動の拡大は、資本の流れが短期間で急激に逆流するリスクをも増大させており、経常赤字(=資本純流入)が高水準となるほど、資本移動の逆流に対する脆弱性は高まり波乱の火種は増幅する。波乱が現実化した場合の影響は読みづらく、この点が現在の米国の経常赤字に対する懸念の本質と考えられる。

主な国・地域を対象に、プラザ合意前後(1985-1987年平均)と今回(2001-2003年平均)の経常収支対名目GDP比率を比較すると、カナダ、北欧3カ国(デンマーク、ノルウェー、スウェーデン)、ASEAN4(タイ、マレーシア、フィリピン、インドネシア)、及び中国は、今回は経常黒字に転じており、現在の主な赤字国・地域は米国、英国、オセアニア2カ国(オーストラリア、ニュージーランド)、中東欧、中南米に限定される。

現在のこの構図は、経常赤字に対する懸念が米国以外には拡散しにくく、米ドルの変動を不安定化させるリスクを高める。これを解消すべく期待されているのが、米ドルの下落を伴わずに国内外の成長率の変化を通じて、米国の経常赤字が抑制されるシナリオである。だが、購買力平価換算のGDPから求めた内外成長率格差(1年前の格差を含む)と経常収支対名目GDP比率を比較すると、オセアニア2カ国、中東欧、中南米については両者の連動性が多少観測されるが、米国及び英国については両者の連動性が低い。この結果を踏まえると、米ドルの下落を伴わずに世界経済の成長のみで、米国の経常赤字が削減されるシナリオに過大な期待はかけられず、今回の対外不均衡の構図が根深く残りつづける可能性を暗示するものと思われる。

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