大和の中国投資情報 9月号 今月号の視点 「利上げ問題の行方」

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2004年09月21日

  • 投資戦略部
中国が日本のみならず世界に与える影響力はますます大きくなりつつあります。香港、北京、台北など中華圏にリサーチ拠点を有する大和総研では、重要性が増した中国経済・株式を分析する月刊「大和の中国投資情報」を創刊しました。

今月号の視点

いったん沈静化したかに見えた中国の利上げ論議が再び盛んになっている。人民銀行が年内に利上げに動くのではないかという見方が増えると同時に、人民元の切上げ圧力が徐々に高まっている。A株市場では、9月初旬に5年ぶりの安値を付ける事態となったが、これには中国特有の株式需給の問題とともに、今後の金融引締め政策の方向性が、中々はっきり見えないという背景がある。換言すれば、中国のマクロコントロール政策が揺らいでいるのではないか、ということである。

経済統計を見る限り、昨年から行ってきた一連の金融引締めの効果は着実に表れている。通貨供給量(M2)の伸び率は昨年夏の20%台から低下し8月には13%台となった。これは3月の全国人民代表者会議で示された目標値17%を大きく下回る。結果として8月の固定資産投資は26%増と、増加率は年初から半減している。

問題は、「マクロコントロールは初歩的な成果を収めたが、少しでも手を緩めればリバウンドの恐れがある」という周小川人民銀行総裁の言葉にあるように、潜在的な投資熱の強さにある。ならば利上げは、ごく自然な政策手段として選択されても良さそうだが、過熱しているのは鉄鋼、セメント、不動産など一部のセクターに限定される、無認可融資の存在など市場化が不充分、インフレ率が上昇しているといっても食料品価格の上昇が主因、利上げすればかえって海外から投機資金の流入を招くなど、つまり利上げは選択し難い手段である。

しかし、現在の選択的かつ急進的な引締め策をいつまでも続けるわけには行かない。やがて量的引締め策を緩和する必要が出てくるが、かといって投資の再燃は困るので、最終的には利上げという市場原理を生かす方向へ政策をシフトさせる必要がでてくるだろう。中国政府はまだ利上げには慎重な姿勢を見せているが、今後予想されるのは、やはり量的引締めの緩和と緩やかな利上げの組み合わせという路線変更ではないか。

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