高まる年金コンサルタントの活用

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2004年09月16日

  • 飛田 公治
 確定給付及び確定拠出企業年金法の2001年の制定以降、運用環境の低迷もあり、企業年金基金はその存続をかけて、大規模な給付減額を伴う制度改定を行っています。加入者・受給者に対する受給権保護を狙いとした企業年金ニ法は、基金関係者への受託者責任を強く迫るものです。その受託者責任の中核理念である「忠実義務」や「注意義務」を果たす為に、年金基金は年金政策のガバナンスの確立に現在最も注力しています。特に効率的な投資政策への明瞭性・説明責任を果たす為に年金コンサルタントを活用するケースが公的・私的の年金を問わず急激に高まっています。

 ここで、年金コンサルタントの役割や業務理念を考察してみたい。年金基金と資産運用機関の関係が代理行為の連鎖である事(頼み頼まれると言う「エージェンシー関係」にある事)を鑑みれば、年金コンサルタントの役割は総代理コスト(エージェンシーコスト)の削減を重視した (1)基金運営コストの低減、 (2)意思決定プロセスの明瞭化、及び (3)リスク管理に基づいた運用効率の向上等を通した年金基金にとってのガバナンスの確立にあると言えましょう。
 従って、その業務理念は「年金基金とともに、常に受益者のために貢献するというStewardship」に支えられるものである。また、顧客満足度を充足するためにも、顧客参画方式のソフトコンサルティングが甚だ重要である事は言うまでも有りません。

 このようなコンサルティング業務にかかわるコンサルタントの個人的資質は、特に次の5つの要素が極めて重要であると実務家として考えます。要するに、理論倒れにならないというバランスの取れた資質というべきです。 (1)プロである事 (2)実務的な事 (3)進取な事 (4)洞察力のある事 (5)職業上の喜びを持つ事

 また、年金基金がプロとしての年金コンサルタントを雇う際の選択基準としては次の3点が重要と考えます。
(1)専門職業家としての誠実性(Professional Integrity)⇒プロとしての倫理基準の明瞭性、つまり潜在的な利益相反行為をいかに防ぐかが重要なのです。
(2)技術的適格性(Technical Competence)⇒例えば、◆評価基準と指標(ベンチマーク・インデックスの保持)、◆投資への基礎調査能力、◆運用機関評価能力、◆システム開発能力、◆負債分析能力
(3)組織的支援能力⇒約束を果たす能力と追加資源を動員できる能力⇒人材(People)・過程(Processes)・手続(Procedures)・方針(Policies)・費用(Payment)の5つのP等、運用機関以上の多様性・多角性が求められます。

 以上のほかにコンサルタントの作業理念には (1)透明性 (2)効率性 (3)柔軟性 (4)安定性が求められます。加えて、その作業視点は5W1Hに、特にコストを重視した考え方であるHow muchの観点を追加した5W2Hで取り組むべきものとかんがえます。また、その作業手順は、 (1)分析 (2)最適化 (3)文書化・様式化 (4)実行 (5)監視・再検討の5段階、端的に表現すればPLAN・DO・SEEを具体的に実現する事と言えましょう。

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