EU新欧州委員会の発足
2004年09月14日
新委員長は、ポルトガルにおける各種の構造改革を実行したリーダーシップと、各国首脳との良好なコミュニケーションが評価・期待されている。しかし、選出された経緯(独仏と英などの意見対立で、当初の有力候補で決まらず、バローゾ氏が次善の候補として浮上し、委員長の座を射止めた)もあって、これまでの委員長と同様に、主要国の利害に翻弄されて、実力を十分発揮できないのではないかとの見方も根強い。ただ、欧州委員の担当配分では、主要国の要求をかわしつつ、適材適所を追求するなど、「独立性」を発揮し、一定の評価を得ている。
新欧州委員会が直面する課題としては、経済改革の推進、トルコのEU加盟問題、各国によるEU憲法の批准、EUの中長期的な予算の策定などがある。この中で、最も優先される課題は、各種の経済改革をスピードアップさせ、EU経済の持続的な拡大に寄与することであろう。
欧州委員会の実体的な権力基盤は強いとはいえない。各国の利害関係を反映して、各国政府によって選出された欧州委員が「各国の利害から独立した立場」で活動するのは難しい。各国民の中でユーロ懐疑主義が強まっている現状では尚更だ。明るい材料は、加盟国が25カ国に拡大して、独英仏など主要国の地位が相対的に低下したことだ。しかし、加盟国が増えたことで、利害の対立する問題や分野が拡がり、新たな対立を引き起こすと予想される。欧州委員会が真のリーダーシップを発揮できるのはまだ先のことだ。
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