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ぼっちゃんですか?

2004年09月01日

原田 泰

昨今は、犬を連れている人同士は、オスですか、メスですかとは聞かない。男の子ですか、女の子ですかと聞く。さらに最近では、ぼっちゃんですか、おじょうちゃんですかと聞くそうだ。もう10歳でおばあさんなんですよ、といった会話になる。犬の世界も高齢化しているらしい。ペットの子育てはエスカレートしているが、人間の子育てが盛んにならないのはなぜだろうか。

理由は人間の子供が高すぎるからだ。もちろん、養育費、教育費もあるが、最大のコストは、母親が子育てのために職を離れなければならないコストだ。内閣府「家族とライフスタイルに関する研究会報告書」(2001年6月22日)によれば、母親が子育て期間中に仕事を離れることによって失われる所得は、その期間を27歳から33歳までとすると2340万円だが、失われる所得はそれだけでは終わらない。子供が小学校に行くようになって母親が仕事を探しても、年功賃金をもらえる仕事は見つからない。母親がパートで働くことと、子供を持たずに働き続けることによって得られる賃金の格差を生涯にわたって合計すると、1億8620万円になるという。これに養育費、教育費を足せば、子供を2人生んだとして、1人当たりの値段は1億円以上となる。これではなかなか子供も生まれない。

買い物にインパクトを与えるには10%とか、20%の値引きが必要だろう。1000万円、2000万円の児童手当は、10%、20%の値引きに相当するが、ただでさえ大赤字の財政状況では、そんな児童手当は到底払えない。しかし、何もしなくてもうまくいく可能性がある。日本的雇用慣行が崩れていけば、年功賃金カーブはフラットになり、かつ、子育て後にも、そのカーブに戻れるようになる。子供を持たずに働き続けることによって得られる賃金の格差が縮小していく。欧米では、その差は、子供の世話で働けない期間の賃金、すなわち2340万円分の部分に近づいている。子供の値段が下がったときに、児童手当、休業補償、保育所の提供などを打ち出せば、人々は人間の子供を育てるようになる。

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