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金余りと長期金利

2004年08月17日

取越 達哉

6月には一時1.9%を超えた10年国債利回りは、再び1.5%台へと低下してきた。この主因は、来年にかけての景気に対する見方が急速に弱気に傾いてきたことに求められよう。とはいえ、やや中期的な観点から考えた場合、「過去10年超にわたって長期金利の低下を支えてきた諸条件が、大きな転換点を迎えつつあるのではないか」という漠然とした不安を、債券市場参加者は拭い去ることができないように思われる。すなわち、日本経済・物価の弱さ、金融緩和バイアスの継続といった基本的な枠組みに加えて、金融機関を中心に続いてきた「金余り」についても、何らかの変化が生じつつあるのではないだろうか、といった不安である。しかも、そもそも金余りというものが非常に漠然としており、定量的に把握することが難しいことも、不安を掻き立てる要因となりえよう。

長期金利に関連の深い金余り指標としては、国内銀行の預貸率や国内部門の資金余剰などを挙げることができる。ただ、それらの動きを見ても、金余りの状況が大きく変化しつつあるとはいい難い。実際、国内銀行の預貸率は、預金増加+企業向けを中心とする貸出減少が続くなか、低下傾向を脱していない。もちろん新規の企業向け貸出に関しては、幾分増加の動きが見られるとしても、それは過去の景気回復局面と比べても弱く、特筆すべき状況にはない。また、経常収支の増加傾向が続いていることにも表れているように、国内部門の大幅な資金余剰にも、減少のシグナルは表れていない。もちろん、国内部門資金余剰の内訳を詳細にみると、政府部門の大規模な資金不足(すなわち財政赤字)が続く中、家計部門もついに資金不足に陥ってしまったことなど、不安を掻き立てるような要素は存在する。しかし企業部門の資金余剰は、それらを相殺して余りあるほどの規模に達し、さらに増加傾向にある。

企業部門においては、バランスシートの改善等が進捗しつつあることに加え、幅広い範囲で設備投資の持ち直しが見られ始めている。そのことは、中小企業・非製造業にも当てはまる、そのため今後は、企業部門の借入が増加、あるいは同部門の資金余剰幅が縮小する可能性がある可能性が否定できない。ただし現在のところ、変化のシグナルが表れていないことも、また事実である。

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