アジア市場の転機は秋以降に
2004年08月13日
6月末のFOMC(1)による利上げ後も、アジアの株式市場は上値の重い展開が続いている。この背景には、米国での利上げはペースはどうあれ、金利水準正常化を目指して今後も継続されるという懸念が市場を覆っていることに加え、原油価格が再び上昇を始めたこと、また、ハイテクセクターに対する先行き不安の台頭などがある。ハイテクセクターの先行きについては、今後、半導体関連分野で供給過剰が生じる公算が大きいとみられることや、7月中旬のインテルの決算(第2四半期)が市場予想を下回ったことがセンチメントの悪化につながったようだ。特に韓国や台湾市場の軟調な動きが目立ち、堅調なシンガポールやオーストラリア市場などの値動きと比較すると、アジア・パシフィック市場の二極化がより鮮明になりつつある。
アジア市場への投資スタンスについては5月初旬以降、「警戒が必要で、ディフェンシブな市場(2)への重点投資」を推奨してきたが、この判断を転換するにはどのような要件が必要になってくるのだろうか。これは、ディフェンシブスタンスへの転換理由となった要因が改善、もしくは消失してくればということになろう。ディフェンシブスタンスへの変更の理由は、米中の利上げおよび利上げ観測、ハイテク過剰供給懸念、原油価格高止まりおよびさらなる上昇懸念、景気拡大基調織り込み済み、であった。米国の利上げについては、年末にかけての利上げピッチが焦点になってくるが、秋口になれば見通しがより明確になるだろう。中国については、当面はこれまでの金融引き締め策の効果の見極めが継続しようが、この夏場(7月~8月)の物価指数が金利引き上げの判断に影響してくると思われる。この期間を通じて利上げがなければ、中国の利上げ懸念はほぼ消失すると考えてもよいだろう。原油価格については一応ピークをつけたとは思われるが、中東情勢の混迷で高止まりとなることも考えられる。新たなテロ攻撃など地政学的リスクの高まりがなければ、米国のドライブシーズンが終了する秋口以降、より明確な低下トレンドとなろう。また、景気指標については、7月ごろまでの統計はSARSの時期との比較で高めにでるのは当然であることから、焦点はやはり9月以降発表される8月の統計となる。
より明確となる米中の金融政策の方向性、原油価格低下基調、8月以降の力強いアジア景気拡大の継続、年末に向けたハイテク需要の盛り上がり、などが確認できれば、韓国や台湾市場などこれまで大きく売り込まれてきた市場を中心に、年末にかけてアジア市場は上昇基調を強めることになろう。一方、これらと逆の状況になれば、市場の低迷は長引くことになる。アジアへの投資スタンスを変更するかどうかの判断は、2004年秋以降が重要なポイントとなりそうだ。アジア市場が膠着状態から脱する時期は近づいている。
(1)Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略。
(2)シンガポールやオーストラリアなど株価変動率が相対的に低い市場。
アジア市場への投資スタンスについては5月初旬以降、「警戒が必要で、ディフェンシブな市場(2)への重点投資」を推奨してきたが、この判断を転換するにはどのような要件が必要になってくるのだろうか。これは、ディフェンシブスタンスへの転換理由となった要因が改善、もしくは消失してくればということになろう。ディフェンシブスタンスへの変更の理由は、米中の利上げおよび利上げ観測、ハイテク過剰供給懸念、原油価格高止まりおよびさらなる上昇懸念、景気拡大基調織り込み済み、であった。米国の利上げについては、年末にかけての利上げピッチが焦点になってくるが、秋口になれば見通しがより明確になるだろう。中国については、当面はこれまでの金融引き締め策の効果の見極めが継続しようが、この夏場(7月~8月)の物価指数が金利引き上げの判断に影響してくると思われる。この期間を通じて利上げがなければ、中国の利上げ懸念はほぼ消失すると考えてもよいだろう。原油価格については一応ピークをつけたとは思われるが、中東情勢の混迷で高止まりとなることも考えられる。新たなテロ攻撃など地政学的リスクの高まりがなければ、米国のドライブシーズンが終了する秋口以降、より明確な低下トレンドとなろう。また、景気指標については、7月ごろまでの統計はSARSの時期との比較で高めにでるのは当然であることから、焦点はやはり9月以降発表される8月の統計となる。
より明確となる米中の金融政策の方向性、原油価格低下基調、8月以降の力強いアジア景気拡大の継続、年末に向けたハイテク需要の盛り上がり、などが確認できれば、韓国や台湾市場などこれまで大きく売り込まれてきた市場を中心に、年末にかけてアジア市場は上昇基調を強めることになろう。一方、これらと逆の状況になれば、市場の低迷は長引くことになる。アジアへの投資スタンスを変更するかどうかの判断は、2004年秋以降が重要なポイントとなりそうだ。アジア市場が膠着状態から脱する時期は近づいている。
(1)Federal Open Market Committee(連邦公開市場委員会)の略。
(2)シンガポールやオーストラリアなど株価変動率が相対的に低い市場。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日