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年金概念の変化

2004年08月09日

俊野 雅司

最近、日本国民全体の関心事の1つとして年金問題がある。たとえば、イラク情勢も重要な問題だが、年金問題は自分たちに直接的な利害をもたらすという点で、より強い関心が示されているものと考えられる。

最近の一連の年金改革が必要だったのは、言うまでもなく、日本社会の少子高齢化傾向が背景にある。将来の日本経済を支えることが期待されている若年層の人口が少なくなり、経済の深刻な活力低下が起こるのではないかと心配されている。これらの世代に対する負担を少しでも軽減しようとする努力が行われているのである。このような状況下で、年金問題については、2つの点でこれまでの常識を修正することが求められているように思われる。

1つは、若年層から高齢層への経済支援という枠組みである。「これまで育てていただいた親の世代に対して、何らかの経済的な恩返しをすることは当然」という「常識」は、今後修正されていく可能性がある。その最大の原因は、高齢者への富の集中である。総務省家計調査(貯蓄・負債編)の2003年平均値を見ると、世帯主の年齢が60歳以上の家計における平均貯蓄額のシェアは54.5%、負債を控除した純貯蓄額の平均値では、同世代のシェアは71.6%となっている。住宅ローンの負担が相対的に少ない高齢者世帯の経済力が圧倒的に強いことが伺える統計である。したがって、今後は、「裕福な高齢者に対する年金給付のあり方」が議論の対象になってくるものと予想される。その結果、今後の年金制度は、経済的に困っている弱者(高齢者ばかりでなく、障害者や遺族も含まれる)に対する社会保障的な意味合いの強い制度に改変されていく可能性が高い。

もう1点は、月々何万円という定額の年金に対する発想の転換である。これは、特に企業年金に当てはまる。民間企業においては、退職後の年金額を保証することが次第に困難になってきたという事情が背景にある。年金資産の運用環境がかなり厳しい情勢になってきているのである。その中で、資産運用の結果次第で年金額が変わる確定拠出型年金制度の導入が進んでいくものと予想される。年金資産の運用リスクを企業ではなく、従業員本人が負担する仕組みである。日本でも海外でも、退職給付債務の負担に耐えきれない民間企業が増えてきており、従来型の年金制度を完全に維持できる企業の割合は、減少していくものと考えられる。

以上の2点を中心に、今後、これまで常識的であった年金概念は、次第に変化していくものと予想される

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