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金利上昇に対峙する企業年金基金て

2004年07月28日

大藤 康博

昨年度我が国の企業年金(以下基金と呼ぶ)の運用利回りは、3年連続のマイナスから一転し、16%を超えるかつてない高い利回りを記録した。このため、基金関係者はやや一息を付いたといった状況である。

こうした中、昨年の国内債券の市場指数は6月以降の金利上昇に伴い、伝統的4資産の中で唯一マイナスの利回り(-1.74%)を記録した。今年度に入っても長期金利を中心に上昇が続いており、4~6月でも軟調な推移(-0.98%)を示している。このため多くの基金では、金利上昇に対処すべく国内債券の代替として、変動利付国債、ヘッジ付外債、生命保険一般勘定やオルタナティブ(代替的)資産等へのシフトが検討され、既に一部実施されている。この背景には、金利上昇により債券価格の下落、運用利回りの悪化を防ぎたいと考える基金と、先の債券に替わる商品を積極的に提供する運用機関とのニーズが一致していることが考えられる。

しかしながら金利上昇が基金全体に及ぼす影響としては、株式資産に比べれば軽微である。一般的に基金では国内債券は資産全体の40%程度組み入れられているが、仮に来年3月末に長期金利が1%上昇(2.5%前後)していたとしても、債券のトータルリターンはマイナス約3%であり、資産全体へは1%程度利回りを押し下げることに留まる。他方、国内株式は30%前後組み入れられているため、日経平均が3月末比500円(11,200円)下がれば、資産全体への影響度は前述の金利上昇時と同様、約1%である。通常、日経平均株価が500円変化するスピードは、金利が1%変動するよりも短く、その幅も大きいことから、基金としては金利以上に株価の変動にも注視すべきであろう。

本来、基金の運用は長期的に資産拡大を目指すために、基金毎の成熟度、掛金負担能力等を勘案して、中長期的な資産配分である基本方針を策定し、それを元に運用を行っている。この基本方針のベースとしては、短期的にマーケットの変動を予測することは困難であり、年金といった長期的な資産である性格を勘案すれば、基本的にはその資産配分を基堅持することが望ましいとされている。この観点からすると、国内債券から代替商品への変更は、近々金利が上昇するという短期的な見通しに基づいた行動であり、年金の運用者として相応しくない対応とも言える。

一方で金利は歴史的に見て大底圏であり、基金が何らかの対応を検討するスタンスは理解できなくはない。また退職給付会計の導入等により年金運用結果に対する評価は、短期的な側面が強くなりつつあることも事実である。こうした点も踏まえ、国内債券代替を検討するに際しては、先の基本方針を見直すのではなく、あくまでも市場環境を考慮した短期的な対応と捉え、変動利付国債や短期債券といった従前の国内債券の延長線上にある商品へのシフトを第一義とすべきであろう。ヘッジファンド等オルタナティブ資産はリスク特性も異なるため慎重に対処すべきであり、仮に当該商品へ投資する場合は、国内債券代替としてではなく、投資対象拡大の一環と位置付けるべきものと考える。

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