大和の中国投資情報 7月号今月号の視点「近づく急進的引締めの終わり」

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2004年07月21日

  • 投資戦略部
中国が日本のみならず世界に与える影響力はますます大きくなりつつあります。香港、北京、台北など中華圏にリサーチ拠点を有する大和総研では、4月に重要性が増した中国経済・株式を分析する月刊「大和の中国投資情報」を創刊しました。

今月号の視点

4-6月期の成長率はSARSの影響から6.7%成長へ落ち込んだ昨年の反動が出るとされていたが、蓋を開けてみると前年比9.6%に減速していた。おそらくは、二桁成長に届くだろうという事前予想に反して意外な減速を示したことから、引き締め効果はすでに浸透し、金利引上げは遠のいたと株式市場は受け取った。前年同期の成長率が7.9%へと大幅に上方修正されていたのだが、この演出(?)がなければ、4-6月期の成長率は、やはり二桁には届いていたはずである。その場合、5%へ上昇したインフレ率の方へ市場の関心は向かっていたかもしれない。

ところで6月のインフレ率は、ついに当局の暗黙の許容水準とされる5%に達した。しかし、変動の大きな食品価格を除くコア・インフレ率を試算してみれば、依然として1%以下の上昇に過ぎないという結果となる。食品価格の上昇は、耕地面積の縮小という構造的な問題や、異常気象による穀物生産の減少という特殊要因による影響を含んでいる。表面的なインフレ率は高いが、今の中国に利上げを急ぐ理由は少なくとも物価の面からは乏しく、過剰投資の抑制手段としては使いにくい。季節調整前の数字ながら、消費者物価は前月比で2ヶ月連続の低下となっている。現時点で利上げの可能性はかなり遠ざかったと言えるのではないか。

過去数ヶ月、固定資産投資の伸び率の低下が顕著となっている。軟着陸シナリオの現実味を増すために中国政府がとる次の手段は、経済が極端に下振れするリスクを回避するため、現在の強力な信用抑制策を徐々に緩めることだろう。選択的な投資規制策は、ここまでに予想以上の成果を上げている。投資はハードランディングだが、経済全体としてはソフトランディングという都合の良いことは通常起こりえない。軟着陸の成否は、急進的な引締め政策を漸進的な引締め政策へ転換するタイミングにかかっている。

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