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TOPIXの浮動株指数への移行について

2004年07月14日

壁谷 洋和

日本の多くの年金投資家が株式運用のベンチマークとするTOPIXに、算出方法の見直し機運が高まっている。具体的には、今や世界的な潮流となっている、株価指数の浮動株調整である。ここ数年でMSCIやFTなど、世界の代表的な株価指数が軒並み浮動株指数に移行した。近年では、日本株式市場でもパフォーマンスをTOPIXに連動させる「インデックス運用」の比重が高まってきており、浮動株の多い銘柄とそうでない銘柄とでは、マーケット・インパクトに大きな格差が生じ得る状況にある。結果として、それは年金などの最終投資家にコスト負担増を強いることにつながる。TOPIXが浮動株調整されていないことの弊害は決して小さくない。このような背景から、足元でようやくTOPIXの浮動株指数化の議論が本格化しつつある。

昨年11月18日に東証が初めてTOPIXの算出方法の見直しに言及すると、今年2月26日には新しい算出方法の試案を公表。それと同時に市場関係者からパブリック・コメントを募った。意見公募の検討結果は当初6月末までに公表される予定であったが、調整が長引き、今月中には明らかになる見通しである。そこで算出方法の見直しに関してどのような方向性が示されるのか、市場参加者は熱い視線を注ぎ込んでいる。算出方法の見直しがここまで注目を集めているのは、2000年4月の日経平均の大幅入れ替えがトラウマになっているためと考えられる。当時を振り返ると、かつてないほどの大規模な日経平均の銘柄入れ替え(30銘柄入れ替え)は、対象銘柄の株価を乱高下させるとともに、ITバブル相場に一息つく市場参加者の心理を急速に冷やした経緯がある。

今回のケースについて言えば、TOPIXへの完全連動資産がおよそ15兆円程度存在し、さらに高連動資産や思惑的な取引の存在を考慮すると、浮動株指数への移行に影響を受ける資産の規模はその数倍に達する可能性もある。対象銘柄へのインパクトは、2000年の日経平均の大幅入れ替え以上となるかも知れない。ただ、結局はそれも“やり方次第”といった面がある。浮動株指数への移行は「平成17年中」と予定されているが、周知期間を十分に置き、かつ移行のタイミングを複数回に分けることによって、多少なりともインパクトは軽減されるであろう。東証に対しては、市場への影響に十分配慮した上での決定を期待したい。

ただ、TOPIXの浮動株指数への移行とその影響について考えた場合、“そもそも論”からすると、年金投資家などの間に「ベンチマーク=TOPIX」とする考え方があまりにも定着し過ぎていることが問題のようにも思える(TOPIX至上主義が画一的な投資家行動を引き起こす)。TOPIXはわが国を代表する株式市場に上場された銘柄を広範にカバーするという特徴がある一方、東証二部や他取引所、JASDAQ銘柄を含まないことや、逆に東証一部の中で極めて流動性の低い銘柄や信用リスクの高い銘柄までもがユニバースに含まれてしまうというデメリットがある。自らの運用スタイルに合わせて、ベンチマークをもっと柔軟に設定しても良いのではなかろうか。TOPIXの浮動株指数への移行という問題は、年金投資家などに対して、ベンチマークのあり方を根本から見直す機会を提供してくれているのかも知れない。

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