「財務会計の基本概念」の討議資料公表 わが国の独自性を重視
2004年07月13日
去る7月2日にASBJ(企業会計基準委員会)のホームページで、討議資料「財務会計の概念フレームワーク」が公表された。「概念フレームワーク」とは、財務諸表等の作成をはじめとする企業の財務報告の基本となる概念を整理したものである。財務報告の目的、維持すべき特性、財務諸表の項目(資産、負債、資本など)の定義、収益・費用や資産・負債の計上時期・金額の決定方法(認識・測定)を整理している。
米国の会計基準や国際会計基準(IFRS)では、概念フレームワークを既に定めており、会計基準の設定や見直しは、これに矛盾しないように行われる。わが国でも、その必要性がかねてから指摘されていたが、今回、討議資料という形式で公表された。この討議資料は、あくまでASBJ(企業会計基準委員会)内に設けられた専門家によるワーキンググループの研究報告であり、ASBJが正式に基準書として認めたものではなく、拘束力は持たない。ただし、今後、会計基準を検討する際に、随時、参考にされていくものと思われる。
今回の討議資料の大きな特徴としては、財務報告が維持すべき質的な特性として、「内的な整合性」という新しい概念を導入していること、その一方で「比較可能性」という概念を除去していることが挙げられる。「内的な整合性」とは、新しい会計基準を複数の選択肢から選んで制定する際に、現行の会計基準全体を支える基本的な考え方と矛盾しないことを重視するという考え方である。「比較可能性」とは、同様の取引には同じ会計処理を適用し、時系列的、あるいは企業間で比較できるようにすることをいう。米国やIASBの概念フレームワークでは「比較可能性」を質的特性に含めているが、討議資料では、これを重視し過ぎると質が異なる取引等に画一的な処理を強要し、財務諸表の有用性をかえって損なうなどの理由から除去している。
うがった見方をすれば、討議資料では、わが国が制定する会計基準が米国基準やIFRSと異なる際に、その独自性を「内的整合性」という概念で正当化することを想定しているようにも読み取れる。「比較可能性」については、会計基準の国際的な統合が必要な理由として強調される面が強いことから、これを除去することで、米国とIASB(国際会計基準審議会)による各国会計基準の統一化の動きをけん制していると考えることもできる。討議資料は英訳して海外でも公表されるが、これらの点から、わが国が会計基準のコンバージェンスに後ろ向きな国と位置づけられることのないよう、十分に注意を払う必要がある。
その他、現行基準では「負債」として計上されている新株予約権を、「資本」以外の「純資産」として計上する考えを示していることなども注目される。今後のストック・オプションの会計処理の検討や、会社法現代化に伴う資本の部の会計処理見直しの際に、論点として浮上してくる可能性がある。
米国の会計基準や国際会計基準(IFRS)では、概念フレームワークを既に定めており、会計基準の設定や見直しは、これに矛盾しないように行われる。わが国でも、その必要性がかねてから指摘されていたが、今回、討議資料という形式で公表された。この討議資料は、あくまでASBJ(企業会計基準委員会)内に設けられた専門家によるワーキンググループの研究報告であり、ASBJが正式に基準書として認めたものではなく、拘束力は持たない。ただし、今後、会計基準を検討する際に、随時、参考にされていくものと思われる。
今回の討議資料の大きな特徴としては、財務報告が維持すべき質的な特性として、「内的な整合性」という新しい概念を導入していること、その一方で「比較可能性」という概念を除去していることが挙げられる。「内的な整合性」とは、新しい会計基準を複数の選択肢から選んで制定する際に、現行の会計基準全体を支える基本的な考え方と矛盾しないことを重視するという考え方である。「比較可能性」とは、同様の取引には同じ会計処理を適用し、時系列的、あるいは企業間で比較できるようにすることをいう。米国やIASBの概念フレームワークでは「比較可能性」を質的特性に含めているが、討議資料では、これを重視し過ぎると質が異なる取引等に画一的な処理を強要し、財務諸表の有用性をかえって損なうなどの理由から除去している。
うがった見方をすれば、討議資料では、わが国が制定する会計基準が米国基準やIFRSと異なる際に、その独自性を「内的整合性」という概念で正当化することを想定しているようにも読み取れる。「比較可能性」については、会計基準の国際的な統合が必要な理由として強調される面が強いことから、これを除去することで、米国とIASB(国際会計基準審議会)による各国会計基準の統一化の動きをけん制していると考えることもできる。討議資料は英訳して海外でも公表されるが、これらの点から、わが国が会計基準のコンバージェンスに後ろ向きな国と位置づけられることのないよう、十分に注意を払う必要がある。
その他、現行基準では「負債」として計上されている新株予約権を、「資本」以外の「純資産」として計上する考えを示していることなども注目される。今後のストック・オプションの会計処理の検討や、会社法現代化に伴う資本の部の会計処理見直しの際に、論点として浮上してくる可能性がある。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。