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新世紀ベンチャーのモデルを考える — 知識経営とベンチャー

2004年07月09日

浅野 信久

わが国のベンチャー企業は、いく度かの創業ブームを経験し、段階的に発展を遂げてきた。周期的に創業ブームが興る要因の1つには、需要と既存ビジネスの間で需給ギャップが、現代の社会経済の足早な変化により繰り返されるからに違いない。需給ギャップの進行途上から顕在化しつつある実需要をいち早く予測し、創造した独創的ビジネスモデルを持って潜在需要の具現化に果敢に挑戦する。これが、アントレプレナースピリッツ(起業家精神)の原点である。ベンチャー企業の原動機(エンジン)が起業家精神であることには今でも変わりない。だが、最近のベンチャー企業の経営行動を見ると、もう1つのエンジンが加わりつつある。それは、情報に基づく「知識経営」である。ベンチャーの中でも、データ分析をもとに緻密な経営戦略を柔軟に構築し実践して行くという知識経営型ベンチャー企業の躍進が目立っている。

競争の厳しい外食産業で成長しているベンチャー企業の場合を見てみよう。成長企業に共通した最近の特長は、流行トレンドや商圏に応じた多業態の店舗運営を行うマーケティング優先型の経営である。統一店舗の多店舗経営が基本であった従来型外食ベンチャーとは、根本的に発想が異なってきている。従来型では、和食、洋食、中華といった決まった飲食カテゴリーの中で、ブランドやインテリアデザインが似通った店舗を展開していた。これに対して、最近の外食ベンチャーでは見た目には1つの企業が運営していると予想がつかないほど、いろいろなタイプの飲食店を多数展開しているのである。イタリアン、創作和食、さらには懐石料理店、さらにはやオーガニックレストランや和洋中の融合店舗といった具合に、流行を先取りした形で新業態店舗を開発し、商圏需要に的確にマッチさせた出店で着実に顧客を獲得していく。流行に変化の兆しが見えれば、躊躇なく消費者より一歩先に業態を変化させていくのである。これら企業は、強力なマーケティングを基盤とする知識経営型ベンチャー企業の典型にほかならない。

ところで、知識経営型ベンチャーのビジネス基盤も、やはりITネットワークテクノロジーを駆使したハイテクマーケティングに支えられている。情報分析技術を駆使し、見えないニーズを浮き上がらせ顧客を獲得するノウハウがそこにある。「IT知識経営」の成せる技である。知識経営型ベンチャー企業誕生にも、ITの発達が大きく寄与している。最近の外食ベンチャーは、マーケティングテクノロジーを備えたソフト分野のハイテクベンチャーという側面を持っているのである。

実は、ソフト分野のハイテクベンチャーの存在は、外食分野に限ったことではない。ファッション業界など流行に敏感で顧客嗜好の変化が激しい業種に、目だっている。現在、ハードおよびソフト分野、あらゆる領域で顧客嗜好の多様化と変化のテンポアップが進行している。これら昨今の状況を鑑みると、「起業家精神」と「知識経営」、このツインエンジンを持つ知識経営型ベンチャーは、新世紀ベンチャーのモデルではないだろうか。      

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