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年金運用におけるOversimplified(過度な単純化)

2004年06月16日

田中 裕文

日本の企業年金の運用では、90年台後半まで運用割合の規制・簿価評価の適用があり、運用の選択肢が極端に狭められていた。しかし国内株式等の市場環境がよかったことから、潜在的に内包する短期的な運用収益の不足、資産額と負債価値のブレなどのミスマッチ・リスクは大きな問題とはならなかった。

運用規制の撤廃・時価会計導入後も、大半の年金運用では以前採用されていた資産配分を強く意識したものが継続されている。その理由は他の企業年金との運用利回りの相対比較を意識、あるいは何らかの変更による運用悪化を懸念したものと思われる。

それが端的に表れているのが、特殊な前提を置いた資産配分の決定、限られた資産クラスの選択、ホーム・バイアス(1)等である。

しかしながら昨今の運用環境の悪化により、運用の損失が予想外に過大となったことから、これまでの年金運用のスタイルに対する疑問が湧き起こっている。それではどうのように対応すればよいであろうか。

図表では、マクロ指標や公開されているアンケート情報にもとづいてモデル化した企業年金における年金部分の退職給付債務(2)の変化を掲載した。退職給付債務は年金を負債として捉える場合の一指標でしかないが、例に挙げた10年間では割引金利の低下のみならず、構造的な変化(制度の成熟化)、制度を取り巻く環境の変化(死亡率、基礎給与の変化)の影響もあったことを示している。

それにもかかわらず、この退職給付債務一つをとってみても割引金利の変化への対応することだけに焦点が当てられ、年金資産と退職給付債務の金利感応度を合わせる(デュレーション・マッチング)ことが処方箋との論調となっている。

これまではコンピューターの演算処理能力に制約があり、簡素化された負債の分析にもとづき資産配分が策定されてきた。しかしその性能が向上した今、年金の負債構造の理解に立ち戻り、より核心に近い(と思われる)運用戦略を策定すべき時期にあるのではないだろうか。

(1)自国資産の偏重傾向

(2)一定の期間にわたり労働を提供したこと等の事由に基づいて、退職以後に従業員に支給される給付のうち認識時点までに発生していると認められるものをいい、割引計算により測定される。

モデル化したある企業年金の加算部分の退職給付債務(1990/2000年を比較)

 

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