大和の中国投資情報 5月号 今月号の視点 「将来のデフレを防ぐブレーキ」
2004年05月21日
中国が日本のみならず世界に与える影響力はますます大きくなりつつあります。香港、北京、台北など中華圏にリサーチ拠点を有する大和総研では、重要性が増した中国経済・株式を分析する月刊「大和の中国投資情報」を創刊しました。
今月号の視点
中国政府は昨年6月に銀行貸出の窓口指導を打ち出して以来、過剰投資の抑制に取り組み始めた。とりわけ今年3、4月に出された一連の投資抑制策は、本格的な金利引上げ政策への転換を想起させ、世界的な株価調整のきっかけともなった。
経済が過熱しているかどうかの一つの目安となるのは、通常はインフレ率である。この点で言えば、中国の消費者物価上昇率は徐々に高まっているとはいえ、4月時点で前年比3.8%に留まっている。これは当局にとって暗黙の許容水準と云われる5%をまだ下回っている。名目成長率が1-3月期に13%の高成長となった割に物価は依然として落ち着いていると言えなくもない。
今回の場合、インフレ率上昇の原因は、穀物生産の減少による食品価格の上昇や、昨年31省のうち21の省で停電が記録されたようにインフラ面でのボトルネックにありそうだ。こうした状況では、金融政策の中心を従来のような窓口指導や預金準備率を主体とした選択的な投資抑制策から、政策金利の引き上げに本格的に移行させるのは得策ではない。また金利引上げは、海外からの資本流入の拡大という副作用も生みかねない。問題は、将来の不良債権となりかねない過剰投資の種だけを如何に摘み取るかにある。
鄧小平の南巡講話をきっかけとして起こった90年代前半の大投資ブームでは、94年にかけてインフレ率が加速し、ピーク時には前年比20%台後半の上昇率を記録した。景気過熱を抑えるため93年の半ばから中国政府は金利を引上げ、固定資産投資は93年の60%増をピークに減速していった。
この時期と比較すると、今回は必要な金融引締めの度合は小さくて済みそうだ。しかし、前回の投資ブームが、後のデフレに繋がる過剰投資の山を築いたことを考えると、同じ轍を踏まないために中国政府の投資抑制策が強硬となるのも頷ける。短期のインフレ抑制というより、将来のデフレを回避する安定化政策を中国政府は取ろうとしている。
今月号の視点
中国政府は昨年6月に銀行貸出の窓口指導を打ち出して以来、過剰投資の抑制に取り組み始めた。とりわけ今年3、4月に出された一連の投資抑制策は、本格的な金利引上げ政策への転換を想起させ、世界的な株価調整のきっかけともなった。
経済が過熱しているかどうかの一つの目安となるのは、通常はインフレ率である。この点で言えば、中国の消費者物価上昇率は徐々に高まっているとはいえ、4月時点で前年比3.8%に留まっている。これは当局にとって暗黙の許容水準と云われる5%をまだ下回っている。名目成長率が1-3月期に13%の高成長となった割に物価は依然として落ち着いていると言えなくもない。
今回の場合、インフレ率上昇の原因は、穀物生産の減少による食品価格の上昇や、昨年31省のうち21の省で停電が記録されたようにインフラ面でのボトルネックにありそうだ。こうした状況では、金融政策の中心を従来のような窓口指導や預金準備率を主体とした選択的な投資抑制策から、政策金利の引き上げに本格的に移行させるのは得策ではない。また金利引上げは、海外からの資本流入の拡大という副作用も生みかねない。問題は、将来の不良債権となりかねない過剰投資の種だけを如何に摘み取るかにある。
鄧小平の南巡講話をきっかけとして起こった90年代前半の大投資ブームでは、94年にかけてインフレ率が加速し、ピーク時には前年比20%台後半の上昇率を記録した。景気過熱を抑えるため93年の半ばから中国政府は金利を引上げ、固定資産投資は93年の60%増をピークに減速していった。
この時期と比較すると、今回は必要な金融引締めの度合は小さくて済みそうだ。しかし、前回の投資ブームが、後のデフレに繋がる過剰投資の山を築いたことを考えると、同じ轍を踏まないために中国政府の投資抑制策が強硬となるのも頷ける。短期のインフレ抑制というより、将来のデフレを回避する安定化政策を中国政府は取ろうとしている。
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