急回復する家計のマインド
2004年05月11日
もっとも、消費者態度指数に代表される家計のセンチメント改善には、大きな違和感が残ることも事実である。なぜなら、年金制度などに対する漠然とした将来不安が払拭されていないと見られることに加え、足許では雇用者所得(報酬)の改善度合いが必ずしも順調であるとはいえないからである(この点は、今回の景気回復局面における特徴でもある)。実際、すでに公表されている諸統計から試算すると、1-3月期の実質雇用者報酬は、前期比横這い程度にとどまったとみられる。もっとも消費者態度指数の動きは、現実の雇用者報酬に先行する傾向がある(最近では、3四半期程度の先行性を有する)。つまり消費者態度指数の改善は、先々の雇用・所得環境の回復を見越したもの、と捉えることができる。
とすれば、足許ですら底堅く推移していると見られる家計の支出動向は今後、さらに底堅さを増す可能性がある。なお、足許の家計支出の底堅さは、1-3月期の消費総合指数が前期比+0.4%、住宅投資総合指数が+1.5%となったことに表れている(いずれも実質.それぞれGDP統計の、民間最終消費支出、民間住宅投資と密接な関係を有する)。
なお、家計のセンチメントの改善は、家計の金融資産選択行動の積極化にも一定の影響を及ぼしていると見られる。実際、一時3.8%と過去最低にまで落ち込んだ家計金融資産に占める株式のシェアは、03年12月には4.9%まで回復している。年明け以降、同比率はさらに上昇している可能性が高い。
以上のように、今後の家計の雇用所得環境や家計の金融資産の選択行動などを占う上でも、今後の家計のセンチメントの動きには十分注意を払う必要がある。
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