問われている地域格差へのスタンス

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2004年04月28日

  • 星野 菜穂子
今回の景気回復期においては、地価動向を含め、都市圏と地方圏の景況格差が注目を集めている。中長期でみても、‘地域格差’は、今後益々注目を浴びるであろう重要なテーマと思われる。一つには、90年代以降の地方分権推進の流れがある。もう一つは、それと併せるように、平成13年(2001年)、「骨太の方針」で示されたように、地方への政策スタンスが「国土の均衡ある発展」から「個性ある地域間競争」へと方針転換されたことがある。このような流れの中、地方財政システムの見直しも始まっている。

では、現状の地域格差はどのように進行しているのだろうか。一人当たり県民所得で地域格差をみると、90年代以降は、それ以前のバブル期における格差拡大が反転、一貫した格差縮小期と位置づけられる。ただし、格差動向を圏域別にみれば、微妙な変化も生じてきている。90年代前半は、バブル崩壊の影響を受けて大都市圏(東京圏、名古屋圏、大阪圏)の著しい所得低下がおきたことから、急速に格差縮小が進行した。しかし後半には、大都市圏内の格差拡大が始まり、「東京の一極集中の再現」ともいえる現象がおきている。このような格差拡大の動きは、大都市圏と地方圏の圏域間格差拡大にはつながっていないこと、地方圏内の格差は縮小傾向が持続していることで、全体の格差拡大には結びついていない。だが、90年代後半以降の格差縮小のペースを緩やかなものにしている。

こうした地域格差は、地方の税源格差でもある。再び議論再燃の兆しのみえる「三位一体改革」においては、国から地方への税源移譲という国・地方の関係の見直しに加え、税源移譲によって生じる地方(自治体)間の格差調整をどのように行っていくのか、が克服すべき課題といえる。そこでは税のレベルで、地域の偏在をいかに少なくするのか、とともに、それでも生じる格差を地方交付税でどのように調整していくか、が問われることになる。これらは、正確には地方自治体間の財政力調整であって地域間の調整ではないものの、地域間に経済力格差がある下で、実態としては地域格差是正とみなすことはできるだろう。

冒頭述べた二つの流れを「地方分権=地域間競争」とみる立場に立てば、地域格差は問題視されることはない。国全体の効率化を目指すことが最優先課題であるからだ。ただし、三位一体改革にしろ、地域格差の問題を避けて通るならば、「東京一極集中」が加速することになりかねない。地域格差に対してどのようなスタンスで臨むかは、今後、問い直される重要なテーマといえそうだ。

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