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地方の医師不足は価格メカニズムが解決する

2004年04月27日

高橋 正明

日本の医療制度が抱える問題の一つに地方の医師不足がある。あまり知られていないことだが、日本の人口当たり医師数は主要先進国の中では最低水準と決して多くない。そのため、医師が都市に集中すると、地方での不足は避けられない。

医師が都市に集中するのは、都市にいることにメリットがあるからに他ならない。生活面(家族も含めて)において都市が魅力的であるのは医師に限ったことではないし、大学病院などに通いやすいため、日進月歩の医療技術の習得に有利なことも重要である。ほうっておけば医師が都市に集中してしまうのが避けられない以上、何らかの人為的介入が必要だが、これには「配給=共産主義」と「価格メカニズム=自由主義」の二つがある。

「配給」とは、指導者の命令によって医師を地方に派遣するシステムのことである。しかし、医師の大半は公務員ではないから、政府が医師の地方勤務を強制することはできない。そのために自然発生していたのが、大学医局による医師派遣である。これは、医局のトップにいる教授が、各地病院の要請に応じて配下の医師を派遣するもので、医師不足解消に一定の成果を上げていた。しかし、共産主義が「権力の肥大化」や「賄賂の横行」などの問題を生んで行き詰まったのと同様、医局による医師の配給も、「医局支配」や「名義貸し」などの行き過ぎを招き、批判にさらされることになっている。

「配給」に限界がある以上、残る解決策は価格メカニズム、すなわち「地方に行けば得をする(少なくとも損にはならない)」という金銭的インセンティブしかない。十分に魅力的な条件(勤務期間も含む)が提示されれば、都市から地方へ医師が自発的に移動し、医師不足は解消に向かうだろう。教員や民間企業の僻地勤務手当が参考になる。

日本では「医は仁術」という考え方が根強いためか、「金による解決」を頭から否定しがちである。そのため、将来の地元勤務を条件に、地元出身者の優先枠を地元大学医学部に設置することが「抜本策」として真剣に議論されている。しかし、これは自治医科大学を拡大するようなもので、何ら画期的なものではない。優遇枠を拡大しすぎれば医学生のレベル低下は避けられないし、結局は金銭的インセンティブで釣っていることにも気がついていない(現状では医師になれない人でも医師になれるという優遇策である)。また、「孤島で献身的に働く医師」の類の報道も目につくが、いくら例外的個人を出してきても、システムとしての解決策にはなり得ない。

共産主義の崩壊は、「金銭的インセンティブを無視した社会システムは持続不能」という教訓を残した。日本の医療の現実を見ても、医師派遣の見返りに資金提供を受けていた医局も多かったようだし、僻地医療を目的に設立された自治医大にも、学費免除の金銭的インセンティブが用意されている。既に金銭的インセンティブが浸透しているのは事実なのだから、これを堂々と表に出し、透明な医師の労働市場を形成するのが正攻法ではないだろうか。金ですべてが解決するわけではないが、金がなければ何も解決しないというのが、身も蓋もないこの世の真実なのである。

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