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ベンチャー育成の意義を再考する

2004年04月26日

加藤 三朋

我が国経済の課題は新たな成長モデルの確立と国際競争力の改善に集約されよう。不良債権処理の本格的な進展、企業再生の拡大、大企業による財務・組織リストラの活発化等に伴い、次なる成長の前提条件は固まりつつある。このタイミングで改めて問われるべきは、ベンチャー育成とそこへの円滑なリスクマネー供給システムのあり方である。

我が国では、いわゆるベンチャー投資ブームこそ幾度か経験したものの、米国にみるようなベンチャー投資の長期トレンドが形成された形跡はない。米国ではハイテクを中心とするベンチャー投資が特に70年代以降に普遍性をもって定着し、産業構造転換、経済成長、雇用等と強い相関を有しながら発展してきた。我が国経済の次なる成長を展望するにあたり欠落しているのがこのようなベンチャー発展のダイナミズムを織り込んだ成長シナリオである。

足元の構造改革進展の後の我が国では、持続的な経済成長と国際競争力強化を担保する新たな付加価値創造の仕組みが何よりも求められる。この点でベンチャーに期待されるところは大きい。新たな成長モデルの構築過程において、ハイテクを筆頭とする多様なベンチャーを輩出する土壌が基本インフラとして形成されることが不可欠となってくるはずである。

半面、資金供給サイドにも大きな意識改革が要請されてくる。これまで我が国では、株式投資の対象は様々な要因から上場企業に偏ってきた。上場企業の創造する付加価値の取り込みが株式投資の専らの主題とされてきたのである。しかし、我が国の次なる成長シナリオに占めるベンチャー企業の潜在的重要性を鑑みた場合、上場企業に傾倒したこれまでの株式投資のあり方は変化せざるを得ない。株式形態のリスクマネーを供給することで、ベンチャーが潜在的に有する高い付加価値創造能力を現実の価値として引き出し、これを投資成果として能動的に取り込もうとする意識へと大きく方向転換することが期待される。

ベンチャー投資が我が国でも単なるブームにとどまらず長期トレンドとして普遍化するには、現実にはいくつかの問題がある。中でも、誰がリスクマネーを提供するのかという点は重要である。平成10年6月施行の「中小企業等投資事業有限責任組合法」では年金に主たる供給者の役割が期待されたが、6年が経過した今日でも年金はベンチャー投資の限界的プレーヤーでしかない。こうした状況に対して事業会社や個人投資家のベンチャーファンド参画を政策的に手当てする方向性も模索されているようである。ただし、個人投資家がベンチャーファンドに参画するには現実問題として、ディスクロージャー等の投資家保護が証券取引法のもとに議論される必要がある。一方、こうした投資家保護の方向性がベンチャーキャピタルの自由度を低下させ、その発展を阻害する恐れがあることにも留意したい。

我が国におけるベンチャー投資の普遍化は確かに困難の多い問題である。しかし、有力ベンチャー企業が絶え間なく登場する経済・社会環境なくして我が国経済の長期的な姿を展望できないのも事実ではあるまいか。

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