ブラジル新時代

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2004年04月14日

  • 長谷川 永遠子
ブラジルは国土面積、人口で世界第5位、国内総生産(2001年)世界第11位の大国である。地球の反対側に位置する日本にとっても同国は気付かない間に身近な存在になってきた。全日本のジーコ監督をはじめブラジル人サッカー選手の活躍は目覚しい。ブラジル産オレンジジュースや鶏肉が日本の食卓をにぎわすようになった。サンバやボサノバといったブラジル音楽のファンは多いだろう。しかし、昨年の政権交代とともに新たな局面に入ったブラジルがどれだけ正確に日本で知られているかとなると、心もとないものがある。

ブラジルでは昨年1月、ルーラ労働者党政権が発足した。ルーラ政権の登場は「民主主義」と「市場の安定」という国際社会が最も重視する2つのキーワードでブラジルが明らかに前進したことをあらわしている。高校中退の金属工だったルーラ大統領は国民の大多数を占める貧困層の希望の星である。大統領はこれまで3度大統領選に挑戦し、いずれもエリート層に阻まれ敗退した。しかし2002年の選挙では企業家や上流階層の中からもルーラ支持に回る動きが見られたところに時代の潮流の変化が感じられた。ルーラ政権は前政権からの経済安定化政策を引継ぎ、反独占、反IMF、農地改革推進といった過去の主張とは距離を置いている。この点でも世界を驚かせる目新しさがあった。

欧米の投資資金はブラジルの変化にいち早く反応し、同国のドル換算株価は昨年倍以上になった。日本資金が出遅れたことで失った利益は案外大きい。こうした状況をお知らせしたく、日頃からブラジルの動静を観察している大学やシンクタンク、貿易振興団体、企業のブラジル・ウォッチャーたちがブラジルの変革の軌跡と今後の課題についてペンをとった。堀坂浩太郎編「ブラジル新時代」勁草書房、全国書店にて発売中!筆者もそこで金融システム安定化への挑戦を論じている。お目通し頂けるならば幸いである。

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