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喧騒と空洞化

2004年04月13日

松原 英人

昨年12月8日、本欄で「投信は持続的成長に貢献しうるか」と題し、概ね以下の点を指摘した。

1. 家計による投信保有は2003年第1四半期(1~3月)末に約3年ぶりに底を打った。
2. 1970年代後半以降、米国ではミューチュアルファンドを媒介として構造改革と株高が好循環を形成していった先例がある。これに倣えば、日本でも、数年以内に家計投信保有残高が個人金融資産の0.3%、金額にして4、5兆円程度増加するか否かを構造改革成功と持続的成長確保のための試金石と見ることができる。
3. 実際には、投信残高増加分はほぼ6:4で国内株式と海外投資(対外証券投資)に向かっている。


現在、2003年12月末段階までの日銀資金循環勘定速報が出ている。これによれば、家計による投信保有残高の増加は同年3月末以降の9ヶ月間で、約5.6兆円(株式投信+7.7兆円、公社債投信-2.1兆円)、個人金融資産残高の0.4%程度となった。増勢だけは既に上記目標を上回っている。

しかし、現実には、株式投信の増加を投資対象別に見ると、国内株式は3.4兆円、海外投資は3.8兆円あり、国内株式と海外投資の比率は逆転している。しかも、上記期間の相場上昇を勘案すれば国内株式の数量的な伸びはほぼゼロから若干のマイナスと推定される。この点は市場手口で投信が一貫して売り越しを続けていることとも符合する。一方、海外投資の方は、ベンチマークの上昇率を勘案しても、数量ベースで25~45%程度の純増と推定される。

さらに補足すると、投信を経由せず家計が直接行う外貨預金や海外投資(ネット取引による外国証券取得やオフショア・バンキング等)の増加があり、その合計は同期間で4.2兆円ある。投信経由の海外投資と合計すると同期間の海外投資増加額は8兆円に達する。

以上、投信市場の動向から見る限り、残念ながら、構造改革と株高による好循環形成にはまだ至っていないものと判断せざるをえない。目下、国内株式市場は、日によっては出来高が20億株を超すなど、バブル期以来の喧騒を呈している。しかし、これは、ネット取引普及と株式売買コストの低下を背景として短期取引が隆盛となったことに負うところが大きく、市場の流動性は著しく増した反面、長期運用対象としての株式は信頼を回復しているとは考えられない(個人投資家による株式ネット売り越し傾向にも変化はない)。

一方、家計からの海外投資は、直接的にも間接的にも着実に増加していることから、国内市場の空洞化が依然懸念される状況が続いているものと思われる。

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