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運用会社の成果主義について

2004年03月25日

大藤 康博

今年度企業年金の運用利回りは株式市場の回復により、4~12月で10%を超える状況となっている。このため運用会社は、3年に亘る運用低迷に伴う時価の下落による残高減少に歯止めが掛かったが、依然代行返上・基金の解散等により一部の信託銀行、外資系投資顧問を除き残高低下トレンドに大きな変化は無く、厳しい状況が続いている。

99年のIT銘柄を中心とした株式市場上昇時には、多くの運用会社が国内株式のベンチマーク(以下BMと呼ぶ)であるTOPIXに対し超過リターン(以下アルファと呼ぶ)を得たものの、その後の大幅な調整局面では一転して、アルファを獲得できない先が過半である。この点も少なからず、運用会社が残高を減少させる要因になっている。因みに当部の調査ベースでは、過去1年間で国内株式の95本のプロダクト中、34本がアルファを獲得するに留まっている。また過去3年であっても同様に33本と、およそ1/3程度しかアルファを獲得できておらず、運用実績面でも逆風下にある(99年を含めた過去5年では概ね半数程度がアルファを得ている)。

こうした状況の中で、運用会社は運用力強化に努めており、その一環としてファンドマネジャー(以下FMと呼ぶ)に対し、成果主義の導入の実施もしくはその制度の徹底を行なっている。運用会社における成果主義は欧米で先駆けて導入され、一般的にはFMの運用実績(アルファ獲得度合い)に応じて報酬が連動するものであり、運用者のインセンティブ向上、顧客のパフォーマンス向上を目指すものだ。しかしながら我が国の運用会社のFMに対する成果主義制度は十分に機能しているとは言い難い。

日本では一般的にFMがリスクを取ってアルファを獲得したとしても、得られる追加的な報酬は限定的であり、また運用実績がBMを下回った場合でも、報酬が大きく削減されることはない。他方、BMを大きく劣後したケースでは、FM自身のポジション自体が脅かされる(退職を迫る訳ではなく配転が通例)といった、極めてインセンティブが効きづらい制度になっている。言い換えれば大幅なリスクを取った場合、得られる報酬よりも失うものの方が大きい形とも言える。

その結果として、FMは敢えて大幅なリスクテイクを行なうことを回避し、過度に他社の運用動向やBMを意識した運用を行い、先の通りアルファが獲得できないことに加えて、その劣後した各社の運用利回りも同程度に収まっているものと推察される。

本来の成果主義導入の目的を達成させるためには、プラスであれマイナスであれ、アルファに報酬を完全に連動させる仕組みに変更することが挙げられる。但し、極端ではあるが制度変更により、大幅にアルファを獲得したFMに対して、その会社の社長の報酬を上回るケースが生じたり、逆にFMの報酬大幅減や場合によっては退職を迫る事態が起こりうることも認識しておく必要がある。個社の運用スタンス(組織または個人運用)にもより一概に論ぜられないが、運用会社は真の運用力強化、顧客利益に繋がる成果主義を含めた報酬制度の再構築が求められている。

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