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英国のしたたかさ

2004年03月22日

岡田 恭二

5月に、ポーランドやハンガリー、チェコなどの中・東欧諸国を中心とした10カ国がEU(欧州連合)に加盟する。それに伴い、ほとんどの現EU加盟国は、それら新規加盟国からの労働力の流入を制限するとしている。加盟後最長7年にわたって、流入に対して、何らかの制限を課すことができるという加盟条約の規定を適用するようだ。英国とアイルランドは流入を制限しないとしているが、英国では社会保障の受給条件を厳しくするとみられる。

現EU加盟国に比べると、全体としてみると、新規加盟国の一人当たり所得は5割以下である。大きな所得格差がある以上、労働力が移動するのは避けられない。高い失業率と社会保障負担に悩む西欧・北欧諸国が労働力の流入を制限したくなるのは理解できる。多くの国で05~06年に国政選挙を控えているため尚更だ。

しかし、労働力の流入を活用する政策を採れないものだろうか。その点では、英国はしたたかだ。社会保障の負担を大幅に増やさず、労働力流入のプラス面をできるだけ享受しようとする意図が明確だ。いろいろな民族が集まれば、様々な面で「摩擦」が生じる。慣習や思考パターンの異なる人々が集まり、活動することで、社会が活性化し、様々なニーズが顕在化する。摩擦や格差はビジネスチャンスを拡大させる。犯罪の増加や雇用の圧迫というマイナスの「摩擦」が生じる可能性があるが、それはコストと考えられる。労働力の流入が社会の活性化に結び付くような仕組みになっているかが問われるべきだろう。

「ウィンブルドン現象」を次のように解釈することも可能だ。重要なのはプレーヤーではなく、様々なプレーヤーの能力を最大限に発揮させ、それを組織化し、価値を生み出すような仕組みを作り上げることだ。プレーヤーは代わっても、「ウィンブルドン」は英国にあり、そこで価値を生み出す。ドイツに「ウィンブルドン」は作れないか。

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