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構造問題の焦点は民間から公的部門へ

2004年03月16日

リサーチ本部 執行役員 リサーチ担当 兼 政策調査部長 鈴木 準

民間法人企業(金融機関を除く)の自己資本比率に変化がみられた。時価ベースである国民経済計算(SNA)のストック編から求められる自己資本比率は、90年末の47.4%から土地資産デフレによって95年末の43.0%まで急低下したが、その後6年連続で上昇して01年末には48.7%に達していた(数値は株式持合いなどを考慮した当方の計算)。90年代後半に地価下落が延々と続いたにもかからず自己資本比率が上昇したのは、企業が借入金の返済にいそしんだからである。大規模な資産デフレは企業の時価ベース純資産を強烈に毀損し続けたから、こうした企業行動も当然であったろう。

ところが、02年には、民間非金融法人企業の自己資本比率が7年ぶりの低下に転じた。バランスシート調整トータルとしての結果と捉え得る自己資本比率の方向性の転換を、負債圧縮と支出(設備投資)抑制に邁進することで自己資本比率を引き上げ続けるほどに萎縮していた状況からの脱却—資産デフレ収束の気配や企業マインドの変化—とみれば、その意味するところは小さくない。資産デフレと負債圧縮(企業の大幅資金余剰)が依然として続いていることに目をうばわれていると、重大な変化を見落とすリスクがある。

一方、SNAから一般政府の純金利支払いの税収比を求めると、かつて84年度の11.2%をピークに91年度は5.0%まで低下した。しかし、その後は再び上昇トレンドに転じ、02年度の実績は9.2%である。大和総研の中期経済予測では、GDP比でみた政府の利払いが足許で上昇トレンドに転換したことを予想している。政府がいうようにプライマリーバランスをうまくコントロールできれば債務残高の発散は回避できるが、財政赤字に他ならない純金利支払分の公債発行が拡大していくことで、プライマリー収支分と合わせた国債等の発行は減らない可能性がある。

現時点で一気にプライマリー収支を黒字化させることは不可能だから、当面、利払い分以外にも債務は累積し、債務残高GDP比は上昇していく。つまり、そうしているうちに、財政節度の指標として、必要となるプライマリーバランスの黒字幅(これは債務残高が大きいほど大きくなる)が絶対に確保不可能と市場から判断されると、財政は利払いの雪だるま状態に陥る危険がある。これは、既述した民間企業の活力回復の兆しを妨げる重大な要因となりかねない。

15日に公表された日銀資金循環統計によると、03年末の負債残高(株式・出資金を除く)は民間非金融法人企業689(132)兆円に対し、一般政府801(442)兆円、公的非金融法人企業120(99)兆円となっている(括弧内は保有金融資産と相殺した額)。金融政策がサポートしているのは、民間セクターというよりも他ならぬ公的セクターといってよく、現在は構造問題の主役が民間部門から公的部門に明確に交代するタイミングのようにみえる。

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鈴木 準

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