中国/香港の近況

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2004年03月15日

  • 櫛田 雅弘
中国第10期全国人民代表大会(全人代)が、3月14日に閉会した。経済的な面では、高成長邁進路線から、秩序ある高成長を指向する姿勢が色濃く出された全人代であったとの印象が強い。04年の経済成長率(03年は9.1%)は7.0%が目標値として掲げられた。素材など、過剰投資が懸念される産業における重複投資を抑止する意向が謳われ、銀行貸付の伸びも03年に比べ低い水準が指標として出された。経済発展の不均衡について言及され、農村部、内陸部の経済発展の促進が課題であることが確認されたことは言うまでもない。為替政策については、特に新たな言及はなく、人民元レートの合理的かつバランスのとれた基本的安定の維持とともに中期的な自由化に向けた整備を進める姿勢が示された。

一方、香港では、先週、財政予算案が発表された。03/04年度の財政赤字幅が予想より小幅になる見込みなどが明らかにされたが、全体的に予定どおりの内容であった。ただ、政府による04年の香港の経済成長予想が6.0%に上方修正され、官民ともに先々の景気に対する自信が急速に回復していることが確認された。昨年7月に、中国中央政府との間で締結されたCEPA(経済緊密化協定)が、今年本格的に施行されるなど、中国本土との経済的な結び付きが一段と強くなることが、香港経済復活の原動力になる見通しである。全人代でも、香港の重要性について触れられ、共存共栄を進めるべきとの主旨が謳われた。ただ、香港の「二制度一国家」体制に対する考えは、緊急時の国家権限のあり方など、自らのグリップ力を強化したい中国中央政府と、既存の自由と民主主義を存続させたい香港市民の多くとの間には溝があり、経済と政治のトレードオフ作戦で香港を取り組もうとする中央政府に対する警戒感は依然根強い。大中華圏を巡る、より重大イベントである台湾の総選挙は、今週末に迫った。

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