加速するグローバル過剰流動性

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2004年03月04日

  • 五百旗頭 治郎
外国人買いによるアジア株の上昇が止まらない。2003年、投資主体別の株式売買統計が発表されている日本・韓国・台湾3ヶ国の株式市場への外国投資金純流入額は過去最高の991億米ドルに達した。年明け以降も旺盛な外国人買いは続いている。アジア主要国の株価指数は軒並み上昇しており、年初から2月末までの上昇率は、香港(ハンセン指数+10.6%)、中国(上海B株+13.3%)、台湾(加権指数+14.6%)などが10%を上回った。世界経済の流れから判断すると、世界的な過剰流動性は今後更に増加して、アジア各国の株価や世界の商品市況を更に押し上げる可能性が高い。

過剰流動性の増加ペース加速を予想する第一の理由は、日・欧・米の金融当局は自国経済のデフレリスクを懸念するあまり、金融緩和から引き締めへの転換が更に遅れる可能性が高いからである。昨年後半からの国際商品価格や船舶運賃の急騰は常軌を逸しているが、これは中国からの旺盛な引き合いが需給バランスの逼迫を招いているだけでなく、世界的なカネ余りが背景にある。鉄鋼製品や銅、ニッケルなどの非鉄製品の価格は前年比2倍程度上昇しており、こうした国際商品市況の急騰は主要先進国に利上げ実施を促している。しかしながら、2月初めの先進7カ国財務相・中央銀行総裁会議でも商品価格急騰への対策や国際協調利上げはテーマとならなかった。日・欧・米の中央銀行にとっては、たとえ自国の金融緩和策がグローバル商品市況インフレに繋がろうとも、自国内の物価がデフレリスクから抜け出すことがより重要なのだ。

もう一つの理由は、中国の人民元切り上げが2004年内にも実施される可能性が高いことである。人民元切り上げ観測が強まれば、1)まず、成長センター中国への資金流入がこれまで以上に増加するはずで、中国発の世界商品市況バブルが加速する可能性が高い。2)また、人民元切り上げにより日本円や韓国ウォンなどの他アジア通貨にも上昇圧力がかかるため、アジア各国のドル買い為替介入がさらに増える。各国の不胎化政策による資金の吸収をどれだけ行うかにもよるが、ドル買い為替介入により外貨準備高が積み上がることは、反対に各国内では過剰流動性を高める要因となろう。そもそも、先進諸国から中国に対する人民元切り上げ圧力は、国際的な経常収支の不均衡(米国の経常赤字増加とアジア各国の経常黒字増加)を解消することを狙ったものであるが、結果は先進国の思惑とは違った形で現れる可能性が高い。

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