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家計の外貨建金融資産と金融・経済教育

2004年03月02日

政策調査部 主席研究員 土屋 貴裕

90年代半ば以降、家計が保有する外貨建金融資産が着実に増加している。評価損によって残高が減少することはあっても、フローはほぼ一貫して増加してきた。雇用・所得環境の悪化や株価低迷に加え、超低金利の長期化で受取利息等が減少しており、家計金融資産の総額は減少するなかでの増加である。最近は為替の変動がもたらす増加ペースへの影響も小さくなり、為替変動に乗じた短期的な投資行動ではなく、長期的な視点に基づいた外貨建資産の積み上げが増えている可能性が高い。

二度の外為法改正を経て、外貨の保有は原則自由化されているが、かつての日本では、一般に外貨の保有は禁止されていた。国内の貯蓄が不足しており、企業の投資資金需要に応えるための貯蓄は希少性が高かったためである。しかし、現在の国内貯蓄は恒常的に超過するようになった(=経常収支黒字)。ペイオフの全面解禁を控え、海外への資金流出は、「日本売り」という見方がなされることもあるが、貯蓄超過経済の日本から資金が流出するのは当然であり、最終的な資金の出し手である家計にとって、成長率が高い海外での資産運用は、将来のリターンを高めることに寄与しうる。

日本の対外純資産から得られる利子・配当金の受取を表す所得収支は、2003年に8.3兆円となり、同時期の貿易・サービス収支の8.4兆円に並ぶ規模にまで拡大してきた。所得収支を2002年末の対外純資産175.3兆円の運用成果とみれば、概ね4~5%程度の収益率だったことになる。この比率は年々低下しているが、例えば、投資対象の一つとしての米国の国債利回りが低下していることと概ね符合する。もっとも、名目GDPと比較した場合、2002年末の対外純資産残高は35.2%、所得収支は1.7%程度に過ぎず、日本全体を潤すまでには至らない。

貯蓄超過経済となり、金利が自由化され、国内での投資機会が減少(=成長速度が相対的に低下)している。こうした環境のもとでは、海外の経済成長の成果を果実として受け取ることを目指すのは妥当であろう。もっとも、どこまでリスク・リターン関係を認識した上での行動かはわからない。学生向け、成人向けそれぞれの金融・経済教育の重要さがより高まってきている。

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