商品市況の上昇はドル安を暗示?

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2004年02月24日

  • 尾野 功一
世界経済の回復や投資対象として注目を集めていることを受けて、商品市況が堅調に推移している。この動きと為替変動との間に何らかの経験則が存在するのだろうか。

商品市況を示す代表的指標のひとつであるCRB先物指数と主要通貨(対米ドルレート)との変動を探ると、80年以降現在までの長期間では、オセアニア通貨(豪ドル、ニュージーランドドル)とCRB先物指数との連動が比較的安定しているが、その他の主要通貨は、関係が薄いか、あるいは連動パターンが変化しているなどで、長期間安定した関係を保つものはない。しかし、2001年以降では、ほとんどの主要通貨との間で連動性が鮮明に高まり、商品市況上昇(下落)と米ドル全面安(全面高)の並存が鮮明となっている。

金価格と主要通貨との間でも類似した傾向が観測され、長期的に金価格との連動性が高いのはオセアニアとスカンジナビア半島通貨(スウェーデンクローナ、ノルウェークローネ)のみであるが、2001年以降では、金価格上昇(下落)と米ドル全面安(全面高)の並存が鮮明である。

このように、長期的には商品市況の上昇は米ドルにとって絶対的に不利とはいえないが、ここ数年に限定すると米ドルに不利となる構図が鮮明である。この現象は、「米ドル安傾向が継続すると、米ドル建て資産より商品の方が投資対象として好まれやすい」、あるいは「商品市況上昇の恩恵を受けやすいオセアニア通貨に対して米ドルが下落し、それが多くの通貨に対する米ドル安に波及する」などの解釈が可能で、両者の因果関係は一方向に限定されない。だが、いずれの解釈にしても、米ドル全面安を暗示する要素として、最近の商品市況の上昇傾向は注目に値する。現在の米ドル安トレンドは、米国の「双子の赤字(財政赤字・経常赤字)」に対する懸念が最大の要因であるが、商品市況の上昇は米ドルの下落に追い討ちをかけるものとなろう。

もっとも、ドル円レートについては多少事情が異なる。過去を振り返ると、日米貿易摩擦、金融システム不安、デフレなど、日本では為替レートにも大きな影響力を持ちうる独自の要素が多く発生し、最近注目を集めている日本政府の巨額の円売り介入も、他の主要通貨にはない現象である。ゆえに、円にとって商品市況の変動はさほど重要な意味を持たず、全く独自の動きをすることも充分に考えられる。

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