「くたばれGDP」へと方向転換を始めた中国
2004年02月23日
一方、中国の高成長に関しては、従来も統計の信憑性という観点から海外で疑問視されてきたが、最近は意外にも国内で「成長率至上主義」に対する批判の声が拡がりつつある。高度成長のもたらした果実と比べ、支払った代価があまりにも大きすぎたのではないか、との反省がその背景にある。例えば、固定資本投資という中国経済のメインエンジンをフル回転させるため、国有商業銀行が地方政府や国有企業に資金を提供し続けた結果、金融システムは巨額の不良債権を抱えて機能不全状態に陥っている。また、沿海地域の経済成長を優先させる傾斜政策の結果、沿海部と内陸部の経済格差は一段と拡大している。中でも農村部は同じ国とは思えないほど貧困が目立っており、その惨状を暴露する「中国農民調査」というルポが最近国内で大きな反響を呼んでいる。更に、産業公害、都市公害が深刻化しており、自然破壊も急速に進んでいる。
報道によると、先日、全国の地方行政のトップを集めた会議で曾慶紅国家副主席は、GDP成長率ばかりではなく、人間、環境、社会などのバランスの取れた成長路線を目指すべきだと指示した。今後、二桁成長という快進撃には期待できないかもしれないが、「くたばれGDP」路線は、中国のみならず世界にとっての朗報であるに違いない。
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