年金資産運用コンサルティング業界の今後
2004年02月20日
わが国の企業年金基金(以下「基金」)の今年度の運用利回りは、世界的な株価上昇により、これまでの3年連続のマイナス利回りから一転し、10%を超える状況となっている。これまでは主として代行返上や確定拠出年金導入等の制度面への対応に追われてきたが、このような状況下で、基金サイドもやや一息つくと同時に、最近では運用問題への関心が高まっている。
年金資産運用に対するコンサルティング・ビジネスは、実際には、運用規制Ⅰが長期間にわたって存在していたこともあり、1990年代半ば以降になって初めて拡大した。基金によるコンサルティング会社の採用開始は、年金資産の投資顧問会社への委託が解禁となった90年ごろからである。その後徐々に利用基金は増加したが、本格的に採用が拡大した時期は、運用規制が完全に撤廃された97年以降である。大規模基金(表1参照)を中心に採用基金は拡大したものの、この2年~3年は運用低迷が続き、コンサルティング会社に報酬を支払うことへの抵抗感があった上、これまでは代行返上等制度面での見直しが優先されたため、現在の利用割合は基金全体で20%前後にとどまっている。
コンサルティング業界の今後
制度面については大筋の方向性を決定している基金も多く、こうした基金は、代行返上に伴う制度見直し後の運用体制について検討を開始している。今後は新たな運用体制構築へのコンサルティング・ニーズに加えて、確定給付企業年金法Ⅱに明文化された受託者責任(加入者、受給者へのプロセス説明責任)を全うするためのサポートもコンサルティング会社に求められるようになると思われる。具体的には、組織上層部への啓蒙も含めた資産運用の管理体制構築への助言・提言が考えられ、今後採用基金の割合は徐々に増加していくだろう。米国では、エリサ法Ⅲ成立後の70年代以降、受託者責任を果たすために、コンサルタントの利用が活発化し、今日では企業年金の70%近い基金が採用するに至っている。
今後は国内でも、新運用体制の構築や社内管理体制の整備に向けての新規採用、既に利用している基金でもより高度な運用情報を求めて契約を継続することが想定され、コンサルティング会社を採用する基金は増加傾向をたどるものと考える。各基金がコンサルティング会社を採用し、運用に対し真摯かつ前向きに取り組むことは、結果として基金の加入者・受給者に貢献していくことになるはずだ。こうした流れが企業年金の世界で醸成されれば、確定拠出年金や個人の資産運用の分野にもコンサルティング・ビジネスが浸透していくだろう。
Ⅰ)厚生年金基金制度発足(1966年)以降、資産配分規制(債券等安全資産50%以上、国内株式30%以下等)、委託運用機関規制(信託、生保に限定)が90年代初頭まで続き、その後段階的に緩和された。
Ⅱ)02年4月1日施行。主として確定給付型企業年金の受給権保護等を図る観点から制定されたもの。
Ⅲ)74年、米国において、企業年金の受給権保護を最大の目的として制定された。
年金資産運用に対するコンサルティング・ビジネスは、実際には、運用規制Ⅰが長期間にわたって存在していたこともあり、1990年代半ば以降になって初めて拡大した。基金によるコンサルティング会社の採用開始は、年金資産の投資顧問会社への委託が解禁となった90年ごろからである。その後徐々に利用基金は増加したが、本格的に採用が拡大した時期は、運用規制が完全に撤廃された97年以降である。大規模基金(表1参照)を中心に採用基金は拡大したものの、この2年~3年は運用低迷が続き、コンサルティング会社に報酬を支払うことへの抵抗感があった上、これまでは代行返上等制度面での見直しが優先されたため、現在の利用割合は基金全体で20%前後にとどまっている。
コンサルティング業界の今後
制度面については大筋の方向性を決定している基金も多く、こうした基金は、代行返上に伴う制度見直し後の運用体制について検討を開始している。今後は新たな運用体制構築へのコンサルティング・ニーズに加えて、確定給付企業年金法Ⅱに明文化された受託者責任(加入者、受給者へのプロセス説明責任)を全うするためのサポートもコンサルティング会社に求められるようになると思われる。具体的には、組織上層部への啓蒙も含めた資産運用の管理体制構築への助言・提言が考えられ、今後採用基金の割合は徐々に増加していくだろう。米国では、エリサ法Ⅲ成立後の70年代以降、受託者責任を果たすために、コンサルタントの利用が活発化し、今日では企業年金の70%近い基金が採用するに至っている。
今後は国内でも、新運用体制の構築や社内管理体制の整備に向けての新規採用、既に利用している基金でもより高度な運用情報を求めて契約を継続することが想定され、コンサルティング会社を採用する基金は増加傾向をたどるものと考える。各基金がコンサルティング会社を採用し、運用に対し真摯かつ前向きに取り組むことは、結果として基金の加入者・受給者に貢献していくことになるはずだ。こうした流れが企業年金の世界で醸成されれば、確定拠出年金や個人の資産運用の分野にもコンサルティング・ビジネスが浸透していくだろう。
Ⅰ)厚生年金基金制度発足(1966年)以降、資産配分規制(債券等安全資産50%以上、国内株式30%以下等)、委託運用機関規制(信託、生保に限定)が90年代初頭まで続き、その後段階的に緩和された。
Ⅱ)02年4月1日施行。主として確定給付型企業年金の受給権保護等を図る観点から制定されたもの。
Ⅲ)74年、米国において、企業年金の受給権保護を最大の目的として制定された。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
直近のMBOによる株式非公開化トレンド
事例比較による公正性担保措置の実務ポイント
2026年01月27日
-
大和のセキュリティトークンナビ 第3回 不動産セキュリティトークンとは?(後半)
不動産セキュリティトークンの発行・流通動向、税制
2026年01月26日
-
大和のクリプトナビ No.6 暗号資産制度WG報告と今後の注目点
業界再編や自主規制機関の体制整備、オンラインでの適合性確保に向けた議論が注目点か
2026年01月26日
-
米国アセット・ウェルスマネジメント業界のダイナミズム
~変革を生み出すイノベーションとは~『大和総研調査季報』2026年新春号(Vol.61)掲載
2026年01月26日
-
誰かの幸せが時々つらい。Z世代とみるSNSの変遷
2026年01月28日

