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欧州投資家のアジア株に対する見方

2004年01月30日

由井濱 宏一

04年1月中旬に欧州大陸の投資家を中心にアジアストラテジーのプレゼンテーションを行った。全体的な印象は、前回(03年12月)の米国投資家訪問時に比べてやや慎重な見方多かったということである。もちろん、他地域と比較してアジア市場の高い成長ポテンシャルについて異論はないものの、たとえば高成長を続ける中国市場での過剰投資による供給過剰問題や不良債権問題が近い将来顕在化してくる可能性はリスク要因として意識しておく必要があるといった見解は比較的多かった。確かに成長を続けるマーケットにおいては中国に限らずこうした懸念は潜在的に存在するが、大都市圏の購買力が1960年代~70年代の日本のレベルに到達している中国では、所得の向上とともに有り余るほどの需要が期待できるはずである。また、エレクトロニクスセクターにおいてはITバブル崩壊の苦い経験を受けて、需要見通しや在庫管理にはより慎重な姿勢を採っているとみられ、短期間に供給過多に陥ってしまう可能性は低いのではないか。また、不良債権問題にしても数年後に迫る金融機関の外国資本への開放を控えて、中国政府は国内の国有銀行への資本注入を行うなど不良債権処理は加速化している。7~8%程度の持続可能な景気拡大が進捗するなかでは、同問題の処理も比較的順調に進むとみてもよさそうだ。SARS患者が中国で発生したことや北朝鮮の核開発問題をめぐる6カ国協議の行方の不透明さなど懸念材料は存在するものの、これらの問題は既に昨年からの継続事項で市場にとってのネガティブサプライズにはなっていないようだ。

米国投資家と同様、人民元の切り上げ問題への関心も高かった。変動為替相場への急速な移行を想定はしていないまでも、ユーロ高が継続している中で、中国が少しでも有利な運用市場として浮上する可能性を探りたいとの意向とも読み取れるが、逆に切り上げ観測が浮上→中国への資本流入拡大→バブル発生といった流れを経て過去の通貨危機と同様の環境が醸成されつつあることに対する備えとも受け取れる。また、目前に差し迫った問題として台湾総統選挙前後の中台間緊張の高まりを気にする向きも多い。ただ、過去の例(96年、00年)を見ると確かに2000年のケースは総統選挙ほぼ1ヶ月前から選挙当日までに15%程度下落してはいるが、両方のケースとも選挙後は上昇に転じている。しかも00年のケースはITバブル崩壊が始まった過程での下落で、総統選挙のみが株価下落要因となったと断じるのは困難だ。仮に調整するようなことがあってもそこは買い増しの機会を提供するとみている。ただ、現地の事情に精通していない外国人投資家からみれば政治的緊張に対する懸念は「売り」で対処することも想定され、今回も選挙前の外国人投資家動向には注視する必要があろう。一方、アジア地域で急増しつつある外貨準備を巡るリスクについて言及する向きもみられた。恐らく、現在外貨準備の大半が米国債で運用されているという事実に基づき、今後米ドルが更に下落するようであれば、米国債投売り→米国金利上昇→米国景気、世界景気への悪影響といった流れを懸念しているとみられる。

当方が提示したストラテジーの一部は、中国との各種の経済関連協定の進展に伴う好影響で香港市場を通年でオーバーウエイトしたいとするものであったが、この点に関しては大筋で合意がみられたようだ。投資家の多くは特に今後の不動産市場動向への関心が高く、長期間デフレに苦しんだ香港経済がデフレ脱却の糸口をつかむことができるかどうか注視している(実際、不動産価格は03年中に底を打ち上昇を開始している)。また、日本株、アジア株に関わらず中国関連株への投資意欲は依然として高い。

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