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65歳雇用延長 と 賃金・退職金

2004年01月26日

川岡 和也

65歳までの雇用継続を義務付ける制度が始まりそうだ(1月20日:労働政策審議会)。定年のある企業を対象に、定年自体の延長か再雇用かを義務付けるという案である。厚生労働省としては、厚生年金定額部分の支給開始年齢が2013年度までに65歳に引き上げられるのに合わせ、段階的に実施する意向だ。

現在、ほとんどの企業の定年は60歳であり、その賃金体系・退職金の仕組みは基本的に定年をターゲットとした制度になっている場合が多い。賃金体系の一般的な形は、従業員が若年の間は提供した労働の内容に比して少ない賃金で働き、高齢になるにつれて提供している労働の内容より多くなる仕組みである。また退職金の場合は、勤続年数に応じた支給乗率や自己都合退職削減の機能に代表される累進的な給付カーブが賃金と同様の問題を内包しているだけでなく、定年退職の場合の上乗せ給付があったり、定年扱いという仕組みがあったり、定年よりも早く辞めてもらうための早期退職優遇があったりする。賃金体系も退職金体系も、定年年齢を到達点として右肩上がりに組み立てられているのである。これが、今まで日本企業を支えてきた、終身雇用と企業内の良く言えば家族的な横並び意識を醸造させた根本的な仕掛けであろう。現在、定昇や年齢給の廃止が大手メーカー等でも叫ばれ話題を醸しているが、これらの年功的な賃金体系は、定年年齢という、従業員個人からも計画できる、企業からの強制的な排除勧告システムの存在と切り離せない問題である。延いてはこのシステムが、労働市場の流動化を阻害している真犯人であり(なぜなら中途退職&中途入社は一企業に勤め続けるよりも、上記の仕組みから生涯収入面で不利になる)、一方で引退後の第2の人生の計画ベタな日本人サラリーマンを作り出しているのである(引退のタイミングは自分で計画せずとも定年というシステムで決まっており、それに逆らって自身の引退年齢を定めるのは収入面で得策でない)。

この、定年延長または再雇用という65歳問題への対処法は企業によりまちまちであろう。おおかたの企業は、現在の60歳前5~10年程度の賃金・退職金を65歳までの期間に均すという制度改定から手をつけるであろう。そして何年かの試行錯誤の後、上記の問題に立ち至るのである。その一連の過程の中で、企業サイドが教訓として学ぶのと、従業員サイドが気付き自己の問題として対応するのと、そのスピードが同調していれば改革はスムーズに進む。付け焼き刃的なうわべだけの改定ではすまない企業の人事戦略の根幹に係わる問題だと、どこで気付き、この問題の対処にどういう人材を割くか……、これが今後のその企業の発展の分かれ道となっていくであろう。

65歳雇用延長という問題は、60歳までの雇用延長とは異なり、上記の日本古来のシステムを根本から構築し直す必要を迫る問題である。そして世界に類を見ない少子高齢化が進む中、日本の企業としてこの問題についてどう答えを見つけられるかについては、他国が高齢化問題を論じるときに日本を成功例として参考に出来るか、それとも失敗例として引合いに出すことになるかという点でも注目されている。いずれにしても、年金支給開始年齢の引き上げだけを契機に軽々に論じる問題ではない。日本人の生き方・価値観の変革につながる大きな意味を内包しているのである。

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