構造改革のスピード
2004年01月01日
景気は2002年初め以来の回復軌道の上にあることがはっきりした。少なからぬ人達が既に日本経済は新たな後退局面に入ったと論じた1年前の状況とは様変わりである。しかも、しばしば指摘されているように、今回の景気回復は、日本経済が長期停滞に入った90年代以降の前2回の景気回復(93年と99年にそれぞれ始まる)と異なって、然したる景気対策のあと押しなしに実現している。
では、「構造改革」が成果をあげつつあるのか。無論そうではない。経済政策が今回の景気回復に寄与しているとすれば、在来型の景気対策は行わないと公言し続けることでかえって民間のやる気を引出すことになったという消極的寄与が一番大きかったといえそうである。政策当局にとって「怪我の功名」であったと評した人がいるが、云い得て妙である。しかし、もとより、このことは、「構造改革」のための政策努力が抑々不要だということを意味しない。「構造改革」の核心が産業構造や企業経営の変革であるなら、主役が民間経済主体であることは当然であるが、それを支える政策枠組みが求められるのもまた当り前だ。それが不足しているから、目下の景気回復の先行きに確信が持たれないでいる。
間もなく3年を経ようとする小泉政権であるが、その「改革」実績は褒められたものではない。だが、他方、何の進展もないわけでもない。評判の悪い財政政策にしても、「政策群」、「モデル事業」といった財政運営の効率化、透明性向上をめざす工夫はみられるし、抜本改革がまたしても先送りされた公的年金にしても、給付削減、高所得高齢者への課税強化への布石はうたれた。また、「改革」を唱え、その部分的な実行にとどまることは小泉政権の専売特許ではない。実は90年代以来の歴代内閣により繰り返されて来たことでもあり(たとえば、橋本内閣の「六大改革」)、その積み重ねは一定の結果を残している。ただそのスピードが如何にも遅いことが問題である。目先の景気の明るさがスピードをさらに鈍らせなければ幸いである。
では、「構造改革」が成果をあげつつあるのか。無論そうではない。経済政策が今回の景気回復に寄与しているとすれば、在来型の景気対策は行わないと公言し続けることでかえって民間のやる気を引出すことになったという消極的寄与が一番大きかったといえそうである。政策当局にとって「怪我の功名」であったと評した人がいるが、云い得て妙である。しかし、もとより、このことは、「構造改革」のための政策努力が抑々不要だということを意味しない。「構造改革」の核心が産業構造や企業経営の変革であるなら、主役が民間経済主体であることは当然であるが、それを支える政策枠組みが求められるのもまた当り前だ。それが不足しているから、目下の景気回復の先行きに確信が持たれないでいる。
間もなく3年を経ようとする小泉政権であるが、その「改革」実績は褒められたものではない。だが、他方、何の進展もないわけでもない。評判の悪い財政政策にしても、「政策群」、「モデル事業」といった財政運営の効率化、透明性向上をめざす工夫はみられるし、抜本改革がまたしても先送りされた公的年金にしても、給付削減、高所得高齢者への課税強化への布石はうたれた。また、「改革」を唱え、その部分的な実行にとどまることは小泉政権の専売特許ではない。実は90年代以来の歴代内閣により繰り返されて来たことでもあり(たとえば、橋本内閣の「六大改革」)、その積み重ねは一定の結果を残している。ただそのスピードが如何にも遅いことが問題である。目先の景気の明るさがスピードをさらに鈍らせなければ幸いである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
メタバースは本当に幻滅期で終わったか?
リアル復権時代も大きい将来性、足元のデータや活用事例で再確認
2025年06月11日
-
議決権行使助言業者規制を明確化:英FRC
スチュワードシップ・コード改訂で助言業者向け条項を新設
2025年06月10日
-
上場後の高い成長を見据えたIPOの推進に求められるものとは
グロース市場改革の一環として、東証内のIPO連携会議で経営者向け情報発信を検討
2025年06月10日
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
「内巻」(破滅的競争)に巻き込まれる中国自動車業界
2025年06月11日