未だ不透明なTLAC債のリスク・ウェイト

2016年2月10日

2016年になり、世界の最大手銀行群であるG-SIBs(Global Systemically Important Banks)による新たな規制対応の動きが増えそうである。

それは、いわゆる「TLAC債」の発行である。

“TLAC(Total Loss-Absorbing Capacity)”とは、G-SIBsの総損失吸収力をいう(※1)。これは、金融安定理事会(FSB)による、G-SIBsの損失吸収力・資本再構築力の充実方法についての政策提言であり、2015年11月のG20アンタルヤ・サミットで承認されている。

「TLAC債」とは、バーゼル規制資本に該当しないTLACをいう。例えば、持株会社であるG-SIBsが発行するシニア債がこれに該当する。

海外では既にTLAC債の発行事例があるが、わが国では未だない。もっとも、報道によると、わが国においても、2019年からの規制適用を見据えたTLAC債の発行が近いという(※2)

こうした状況に合わせて、金融機関がTLAC債を保有する場合の規制上の取扱いが整備されつつある。それが、ダブルギアリングである。

すなわち、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)は、金融機関が、議決権保有割合が10%以下のG-SIBsが発行するTLAC債を保有するとした場合、自行の普通株式等Tier 1(CET1)の10%超相当分については、自行のTier 2から控除するという提案をしている(※3)

しかし、一点、不透明な部分が残されている。それは、TLAC債のうち、ダブルギアリングによってTier 2控除されない部分、すなわち自行のCET1の10%以下相当分のリスク・ウェイトである。

この点については、BCBSからは、何らの変更の提案もなされていない。すなわち、TLAC債を、シニア債よりも高いリスク・ウェイトが適用される劣後債に準ずるものと位置付けるという提案はしていない。

そのため、現行規制に従うと、例えば日本のG-SIBsのTLAC債のリスク・ウェイトは、標準的手法では20%になるものと思われる。

もっとも、一部では、海外展開をしていない日本の小規模地銀や信用金庫(国内基準行)がTLAC債を保有するとした場合、そのリスク・ウェイトは250%に引き上げられるのではないかという見解もあるという。

この見解は、おそらく、国内基準行がバーゼルⅢ適格の金融機関劣後債を保有した場合のリスク・ウェイトが250%とされていることとの平仄を合わせたものと思われる。

言うなれば、この見解は、TLAC債を、劣後債に準ずるものと位置づけているということになる。

そのため、この見解によれば、TLAC債の購入主体が海外展開をしている金融機関(国際統一基準行)の場合は、リスク・ウェイトは20%ではなく100%ということになろう。

筆者が日本の監督当局に問い合わせたところ、この問題の落としどころは未定とのことであった。

TLAC債の購入を検討している金融機関としては、一刻も早く明確にしておきたい問題だろう。

(※1)TLACの概要については、以下の大和総研レポートを参照されたい。
「TLAC(G-SIBsの追加規制)の最終報告」(鈴木利光)[2015年11月11日]
(※2)日本経済新聞電子版「三井住友FGが新型社債 年1兆円規模、巨大銀行規制に対応」[2016年1月22日]等参照
(※3)金融機関によるTLAC債保有のダブルギアリングの概要については、以下の大和総研レポートを参照されたい。
「TLAC保有のダブルギアリング、Tier 2控除?」(鈴木利光)[2015年11月25日]

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