サマリー
◆2024年8月の貿易統計によると、輸出金額は前年比+5.6%と9カ月連続で増加したものの、8月上中旬分(同+12.3%)から急減速した。8月下旬の台風による工場稼働停止などの影響が自動車を中心に表れたとみられるほか、円高進行を背景に輸出単価の伸びも鈍化した。季節調整値は前月比▲3.9%と2カ月ぶりに減少した。輸入金額は前年比+2.3%と5カ月連続で増加したが、輸出と同様に上中旬分(同+19.5%)から急減速した。円高進行により円建ての輸入金額が下振れしやすかったとみられる。季節調整値では前月比▲4.4%と4カ月ぶりに減少した。以上を受け、貿易収支は▲6,953億円と2カ月連続の赤字、季節調整値では▲5,959億円と39カ月連続の赤字となった。
◆8月の輸出数量は前月比▲2.7%と3カ月ぶりに減少した。自動車の部分品やプラスチック、鉄鋼などの中間財が減少した。また、前月の押し下げ要因であった半導体等製造装置や乗用車などでは持ち直しが鈍かった。輸出数量全体を地域別に見ると、米国向け(同▲3.0%)、EU向け(同▲5.3%)、アジア向け(同▲1.0%)のいずれも減少した。
◆先行きの輸出数量は緩やかな増加基調を辿るとみている。米国経済は底堅く、米欧における利下げや中国政府による内需刺激策、シリコンサイクル(世界半導体市場に見られる循環)の回復もあって日本の輸出が増加しやすい環境へ向かうだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
2024年7月貿易統計
輸出数量の伸びが物足りず内容も良くない結果に
2024年08月21日
-
2024年6月貿易統計
自動車輸出の回復の遅れなどにより貿易赤字(季節調整値)が拡大
2024年07月18日
-
2024年5月貿易統計
欧州向け自動車輸出が下振れし輸出数量は減少に転じる
2024年06月19日
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年1-3月期GDP(1次速報)予測 ~前期比年率+0.5%を予想
外需が下押しも内需は堅調/小幅ながら4四半期連続のプラス成長
2025年04月30日
-
2025年3月鉱工業生産
自動車工業や電気・情報通信機械工業など10業種が前月から低下
2025年04月30日
-
急速に広がる資格情報等のデジタル化
利用時に気をつけるポイントと求められるデジタルリテラシー
2025年04月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日