企業は何を基準にAIを選ぶべきか

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2026年02月02日

先日、大学入学共通テストでAIが高得点を記録したという記事を目にした(※1)。9科目満点・得点率97%という見出しはインパクトが大きく、ネット上でも話題になっていた。AIモデルの性能向上のスピードに驚かされる一方で、モデルごとの実行速度や処理の得手不得手といった特徴に目がいった。

確かに、主要モデルには依然として“色”がある。長文やマルチモーダル(テキスト・画像・音声といった多様な情報を統合して処理すること)に強いモデル、長文の一貫性や分析に定評のあるモデル、創造性やコード生成で強みを持つモデルなど、“色”の出方はそれぞれだ。今回の大学入学共通テストという限られた土俵で見ても、日本語処理能力や数学をはじめとした理数系分野などで、点差としてはわずかではあるもののAIモデルごとの特徴がうかがえた(※2)。

企業のAI導入にあたっては、このAIモデルごとの特徴が悩ましい点でもある。用途に応じて最適なAIモデルを使い分けるのが理想ではあるが、現状はAIモデルの更新サイクルが速く、特性や相対的な優位も短期間で入れ替わるため、運用として持続しにくい。企業でのAI利用において機密情報の扱いは重要であり、利用するAIサービスを増やすまたは変更するごとに、セキュリティ対策やアクセス権限などの設計が必要となる。また契約やライセンス、ログの保全といった管理業務の負荷も増えていく。現実的には、汎用的で性能の高いモデルを1つ中核に据え、本当に埋め難いギャップが確認された領域に限って特化型のAIモデルを採用するようなアプローチとなるだろう。ただし、この中核に据えるAIモデルの選択も、既存システムとの連携要件などが制約となり、結果として使いたいモデルが採用できない場合もある。

とはいえ、大手AI企業が提供するモデルは総じて汎用的な性能水準に達している。まずはAIモデルごとの違いにとらわれすぎず、現状のAIが得意な領域を起点に、業務フローの設計を最適化することが、企業のAI導入を進めるうえでの近道だろう。完璧なモデル選びを目指すより、業務フローの中でAIが力を発揮できる工程を先行してAIに委ね、人は判断と最終責任に集中する。可能であれば、モデルが変わっても崩れない設計を意識しておくなど、特定モデルへの過度な依存を避ける対策がとれるとなおよい。

業務フローをAIに最適化していくにあたっては、冒頭にあげた記事でも変則的な画像を認識する能力に欠けると指摘されていたように、AIが構造的に苦手とする領域がある点にも留意したい(※3)。また、AIは一定の確率で誤答や取り違え(ハルシネーション)を起こす。これらの特徴を理解したうえで、業務において「AIに任せる工程」と「必ず人が介在する工程」の線引きをしていくことが重要になる。

AIモデルの性能競争は目を引くが、企業が重要視すべきはそこではない。モデルの優劣を追いかけることよりも、AIの特性を理解し、業務との適切な役割分担を設計することこそが、企業がAIを実装し定着させていくうえでの鍵となる。

(※2)もちろん、AIモデルによって適したプロンプトにも若干の差があるため、この結果だけがAIモデルの差異をあらわすものではない。

(※3)現在のAIモデルは統計的なパターンに基づく確率的生成を行うため、因果関係の推論や不規則な画像の認識など、現時点では完全な克服が難しい領域が存在する。

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執筆者紹介

経済調査部

主任研究員 田邉 美穂