グリーンボンドのグリーンリスト改訂に向けた議論
2025年11月17日
気候変動や生物多様性の保全といった環境課題の解決に資する事業(グリーンプロジェクト)に要する資金を調達するために発行される債券をグリーンボンドという。どういったプロジェクトがグリーンプロジェクトに該当するかについて、世界的には国際資本市場協会(ICMA)のグリーンボンド原則が参考にされている。この原則には、グリーンボンドの資金使途として適格とされるグリーンプロジェクトの分類が例示されている。
ICMAのグリーンボンド原則は世界各国で使われることを想定し、大枠のみを定めている。そのため、日本では発行体や投資家を中心とする実務関係者向けのガイドラインとして、環境省が「グリーンボンド及びサステナビリティ・リンク・ボンドガイドライン」を策定している。
このガイドラインでは、付属書として「明確な環境改善効果をもたらすグリーンプロジェクトの判断指針」が示されている。ICMAのグリーンボンド原則に示されたグリーンプロジェクトに沿って具体的な資金使途を示した上で、環境改善効果を算出する際の具体的な指標の例、ネガティブな環境効果を例示した一覧表(グリーンリスト)も付されている。
2025年10月に環境省「第7回 グリーンリストに関するワーキンググループ」が開催され、「今年度の改訂に向けた検討の方向性について」が示された。そこでは、今後の優先課題の1つとして、「国際的なガイダンス等との関係性の整理」が挙げられている。対象となっている具体的なガイダンス等として、ICMAのグリーンボンド原則改訂への対応(グリーンプロジェクトに寄与する事業の追記)(※1)や、ICMAの“Sustainable Bonds for Nature: A Practitioner’s Guide”(自然をテーマとする債券を発行する際の実務者ガイド)や国際金融公社(IFC)の“Harmonized Circular Economy Finance Guidelines”(循環経済を支援するプロジェクトへの資金供給の機会の特定、定量化の支援を目的とするガイドライン)、Climate Bonds Initiativeの“Climate Bonds Resilience Taxonomy”(気候変動に対するレジリエンスもしくは適応を強化することを目的とした分類法)などが示されている。
今後、上記を踏まえたグリーンリストの改訂が検討されることになる。グリーンリストの充実を通じて、企業や各団体が、自らの実施する事業がグリーンプロジェクトに該当するかどうかを判断しやすくなり、グリーンボンドの資金使途の幅が一段と広がることが期待される。
(※1)「グリーンプロジェクトに寄与する事業」は、グリーンプロジェクトには直接該当しないものの、グリーンプロジェクトのバリューチェーンに必要なプロジェクトを指す(例えば電気自動車の部品製造など)。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

- 執筆者紹介
-
金融調査部
主席研究員 太田 珠美

