企業の開示事例から見る気候変動の物理的リスク・機会と適応策

地球沸騰化時代の企業戦略と情報開示

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2025年12月29日

  • 調査本部 フェロー兼エグゼクティブ・サステナビリティ・アドバイザー 塩村 賢史
  • 金融調査部 主任研究員 依田 宏樹

サマリー

◆気象災害の激甚化、国際協調の綻びもあり、気候変動の物理的リスクやその適応策への注目が高まっている。この状況を受け、本稿では、気候変動に伴う物理的リスク・機会や適応(対応策)にフォーカスをあて、日本の上場企業の開示状況について業種別に整理・分析をした。

◆物理的リスクについては、業種ごとに重視しているリスクに違いがある。例えば、食品業界では、異常気象による農産物原料の収量減少・価格上昇、建設・資材業界では、夏季の気温上昇による労働環境の悪化、自動車・輸送機業界では、自然災害によるサプライチェーンの寸断などについて、多くの企業が認識している。

◆収益機会に関しては、物理的リスクと比べると開示は少ないが、建設・資材業界において、国土強靱化に伴うインフラ建設、医薬品業界におけるデング熱、永久凍土融解による感染症拡大対策などの開示が目立った。

◆情報開示の形式という観点では、物理的リスクと対応策の対応関係がわかる表形式の開示が読み手にとってはわかりやすい。なお、毎年分析対象を変えている企業の場合は、過去の分析を含めた包括的な表の作成などを行うと、読み手の理解が進むのではないだろうか。

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