新たなデジタル証券「セキュリティトークン」とは何か

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2025年09月22日

近年のブロックチェーン技術の発展を受け、新たな証券である「セキュリティトークン」が発行されるようになり、投資家の間で注目を集め始めている。セキュリティトークンのセキュリティは「証券」を意味し、トークンは元々「しるし」「証拠」などを意味していたが、電子的なデータという意味で使われており、セキュリティトークンはデジタルな証券を意味する。

セキュリティトークンは、現在、主に不動産投資による収益を分配する証券として利用されている。不動産投資といえばREITがあるが、REITは証券取引所に上場されており、証券保管振替機構のシステムで取引が記録されるが、セキュリティトークンは民間企業が運営するプラットフォーム上で、ブロックチェーン技術を利用して取引が記録されるという違いがある。銘柄によっては10万円から投資可能であり、REITとは異なり単一の不動産を投資対象とするものも多い。証券取引所に上場されておらず、一般的に、セキュリティトークンの価格はREITほど金融市場の影響を受けないという特徴がある。

セキュリティトークンで利用されているブロックチェーン技術は、取引データを一つの組織が中央集権的に管理するのではなく、取引参加者の間で分散して管理するものであり、暗号資産(仮想通貨)で利用されている。これまで多額の暗号資産が不正に流出したことがあるため、暗号資産で利用されている技術と聞いて、安全性に問題はないだろうかと不安に思う投資家もいるかもしれない。

しかし、セキュリティトークンで利用されるブロックチェーン技術は暗号資産で利用されているタイプと異なるものであり、基本的に流出の問題は生じないといってよいだろう。ブロックチェーンは大きく分けて、悪意のある第三者を含めて誰でもネットワークにアクセスできるタイプと、アクセスできる者がネットワーク管理者によって限定されるタイプに分かれる。わが国で販売されているセキュリティトークンは後者のタイプのブロックチェーンを利用しているため、悪意のある第三者がネットワークにアクセスし、取引データを書き換えてセキュリティトークンを盗み取ることは防止されている。

現在、わが国で販売されているセキュリティトークンの主な課題は、2020年の制度改正を受けて発行が可能になったばかりであるため、流通市場が十分発達しておらず、必ずしも途中売却が容易でないことである。この点については、一部の銘柄は証券会社の私設取引システム(PTS)で売買が可能になっており、今後、新規発行額が増えて購入する投資家が増えれば、流通市場も活発になることが期待される。

セキュリティトークンは現在のところ不動産投資で利用されているが、知的財産権や航空機といった資産を投資対象とするものも検討されている。新たな商品やサービスが生まれる可能性もあり、セキュリティトークンの今後の展開が注目される。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希