ニューヨークのランチ事情

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2025年09月05日

  • ニューヨークリサーチセンター 主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光

ニューヨークはマンハッタンに勤務し始めて早2年弱が経つが、ずっと痛感していることの一つに、物価高がある。それを否が応でも感じるのが、出勤日のランチタイムである。

筆者は、今年の7月に入るまで、特に対策を立てることもなく、毎日、気まぐれに、勤務先近辺の店でランチをテイクアウトしていた。出勤日における1回当たりのランチ代に、概ね15ドル(約2,210円)から20ドル(約2,946円)を費やしていた(※1)。ただ、それを1年半以上続けてきた段階で、ようやく、そうした支出がサステナブルではない、と思うに至った。

そこで、まずは自分の支出を客観視すべく、ニューヨークの平均的なランチ代を調べてみた。著名なフードプラットフォームであるezCaterの調べによると、ニューヨークに勤務する人々の出勤日における平均的なランチ代(※2)は、「月額418ドル(約61,572円)」であるという。これは全米で二番目に高い額であり(※3)、全米平均の「月額282ドル(約41,539円)」に比して約48%も高い(※4)。ひと月に20日出勤するとして、これを1日単位で換算すると、20.9ドル(約3,079円)となる。

出勤日のランチ代が負担であると感じているのは、筆者だけではないようだ。というのも、出勤と在宅勤務を併用するハイブリッドワーカーの58%が、もし雇用主がフリーランチを提供してくれるのであれば、週に3日以上出勤すると回答しているのだ(※4)。

こうした状況にあって、今年の6月、筆者は、同じオフィスに勤務する知人から、ランチのサブスクリプションを提供するサービスを教えてもらい、入念に検討した結果、7月からそのサービスに加入したわけである。

そのサービスは、週5回出勤する者に向けては、月額約152ドル(約22,390円)で、概ね16回から20回のランチ代を賄えるプラン(「120ポイント」付与)を提供している。勤務先近辺の店の多くがそのサービスと提携しており、通常価格に比して概ね35%のディスカウントが適用されている(メニューに応じて、概ね、「6ポイント」から「12ポイント」が割り当てられている)。筆者がそれまで15.24ドル(約2,245円)でテイクアウトしていた、とある店のインドカレーは、「8ポイント」で購入できる。サービスの表示によると、これは通常価格から34%のディスカウントとあることから、約10.1ドルに相当する。

こうして、筆者は、そのサービスに加入してから2か月で、総額155.41ドル(約22,892円)のディスカウントを享受している。総じて満足しており、このサービスを1年半以上知らなかったことが悔やまれる。

このように、物価高が続く米国にあっては、その物価高を「利用」したサブスクリプションのサービスが数多くある。その中でも、今回紹介した、出勤日におけるランチのサブスクリプションは、最も「お得」なサービスの部類に入るだろう。

(※1)2025年8月28日の外国為替市況(日本銀行)、1ドル147.30円で換算。以下同様。
(※2)ランチの形態は、勤務先近辺の店でイートイン若しくはテイクアウト、又は家から持参、のいずれかを問わない。
(※3)ちなみに、全米で最も出勤日のランチ代が高いのはロサンゼルスの「月額432ドル(約63,634円)」であり、三番目に高いのはサンフランシスコの「月額416ドル(約61,277円)」である。
(※4)‘The Lunch Report 2024’(ezCater, 2024/10/16)

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ニューヨークリサーチセンター

主任研究員(NY駐在) 鈴木 利光