高齢親の金融リテラシーを子が支える?
2025年08月29日
もうすぐ8月も終わる。この夏休みも、子ども連れで実家に帰省した家族が多かったのではないだろうか。私は、この時期は同窓会等で旧友に会って、お酒を飲みながら昔話やお互いの近況に花を咲かせるのが楽しみのひとつになっている。50代にもなると、話題の中心も変わる。以前は子育てや仕事内容などだったが、近年はもっぱら親の介護や自分と配偶者の老後の備えだ。「親の介護や入院に、いくら準備しておけば良いのだろう」とは酔いも醒めそうな話題だ。しかし、気が置けない仲間同士だからか、それぞれが思っていた金額の答え合わせの良い機会になったからか、いずれにせよ話が弾んだ。
後期高齢者(75歳以上)である私の親世代でも、介護や医療にかかる費用を不安に思う人は多い。内閣府が公表した「令和7年版 高齢社会白書」によると、75歳以上の「経済的な面の不安」で最も多く挙がっているのが「物価が上昇すること」(約7割)だが、これに続いて「収入や貯蓄が少ないこと」、「自力で生活できなくなり、転居や有料老人ホームへの入居費用がかかること」、「自分や家族の医療・介護の費用がかかりすぎること」がそれぞれ3割超と上位を占めている。同白書では、「今後の備えについて」の中で、5年前の前回調査に比べて生命保険、病気やけがのための保険、個人年金、介護のための保険の加入比率が上昇していると示されてはいるものの、高齢者の不安を解消するには至っていない。
勿論、想定し得るすべての費用をカバーしようとすると保険料も高額となるため、不安を完全に払しょくするのは難しい。しかし、高齢者の不安が根強いのは、「知らないことが多い」ためではないだろうか。個人差はあるだろうが、確定申告での医療費控除や高額療養費制度の内容や、加入している保険のカバー範囲を把握していなかったり、家計簿をつけておらず1ヵ月あたりの生活費を把握していない高齢者もいるだろう。
高齢者の金融リテラシーを高めるのが不安を解消するための近道なのだが、そう簡単にはいくまい。慣れない作業に億劫になったり、知らないことを自分で調べたりするのに消極的だったり、ファイナンシャル・プランナー等の専門家に相談したくとも資産や収入のことを知られることに抵抗を覚える高齢者は少なくないだろう。
そこで期待されるのが子どもだ。他人には話しづらいことも、長年の親子関係があれば、多少乱雑でも本音を言いやすい。親が不安を口にしたとき、子どもが耳を傾け、必要な情報を整理してあげるだけでも、親の不安は小さくなっていくだろう。「50の手習い」、「リカレント教育」、「学びなおし」といった言葉があるように、私のような世代も新しい知識やスキルを習得する行動が必要だ。仲間の中には、「親に何度『子どもに迷惑かけないように自分で調べるんだよ』って言っても何にもしなくて頭にきたから、こっちがファイナンシャル・プランナーの勉強をしたよ」という者もいた。親の金融リテラシーを補うことは、同時に自分自身の金融リテラシーを高めることにもつながるはずだ。私も件の友人のように、「お陰で、俺は子どもに同じストレスをかけなくてすみそうだ」と言えるようになるのが目標となった。
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金融調査部
主席研究員 中村 昌宏