ロンドンは地下鉄がアツイ
2025年07月28日
先日、海外出張で初めてロンドンを訪れた。北緯51度に位置し、北海道の稚内よりも高緯度ではあるが、北大西洋海流と偏西風の影響で温暖であることは知っていたし、ヨーロッパの熱波のニュースも耳にはしていた。所詮、フランスやスペインといった大陸の話と高を括っていたので、ヒースロー空港に降りたった際に気温が30℃を超えていたのには少々驚いた。ただ、現地の移動の大半は車であったし、そもそも、平日は仕事場とホテルの往復くらいだったので安心していた。しかし休日の土曜日は違った。この日の移動は、Tube(チューブ)と言われるロンドン市内を走る地下鉄を利用したのである。Mind the gap(電車とホームの間が空いていること。駅でのアナウンスなどもある)こそ見逃したが、世界最古として知られるロンドンの地下鉄に乗ると意外に狭い。そして何よりもアツイ。冷房や扇風機がないのである。夏は冷房でキンキンに冷えている天国のような日本の地下鉄に慣れていた自分にとって、ロンドンのそれはまさに地獄であった。そして、車内を見渡すと多くの乗客がペットボトルを持っていた。熱中症予防というためなのだろうが、冷却効果もあるのだろう。夏のロンドンの地下鉄に乗る際は、冷たい飲み物を持参することをお勧めする。
そんな地下鉄の日本における冷房導入の歴史を見てみよう。始まりは、当時の営団地下鉄(現在は東京メトロ)が1971年に導入した「駅冷房」「トンネル内冷房」である。当初は、車両自体に冷房装置はついておらず、駅およびトンネル内で冷やした空気を車両内に取り込むという発想だ。導入当時、銀座駅構内は10℃程度、温度が下がったようだ。その後、私鉄との相互直通運転が進み、地下鉄が地上路線を走る区間が増えてきたこともあり、1988年より車両冷房が開始された(※1)。ちなみに、ロンドンの地下鉄の一部の路線では2010年より冷房車両の導入が始まっているようだが(※2)多くの路線は未導入であり、温暖化が進んでいる昨今の状況に鑑みて早期の全面導入をロンドン市民も望んでいることだろう。
一方、ロンドンの地下鉄の自動改札では、オイスターカード(プリペイドカード)の他、クレジットカードのタッチ決済機能の利用が普及している点はアツかった。日本でも来春より東京メトロが事前登録なしのクレジットカードのタッチ決済の導入を予定する(※3)など、タッチ決済ができる路線は増えてきたものの、JR等は未導入であり(※4)、今後の動向に注目したいと思う。
新しい取り組みは、当初想定されない事象に翻弄されることがままある。一方、年齢を重ねると、安定志向に陥りがちになり、新たな変化に躊躇することもあるように感じる。しかし、経験を重ねているからこそ、臨機応変な対応ができるはずである。温故知新よろしく、常に変化を恐れず、柔軟な発想を大事にしていきたいと地下鉄の歴史から学んだ気がした。
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