中高生への金融経済教育で大事なこと

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2025年03月24日

官民一体で金融経済教育を提供する金融経済教育推進機構(J-FLEC)が昨年4月に設立されて、間もなく1年になる。J-FLECは金融経済教育の提供に関して、企業へのセミナー、学校への出張授業など、講師派遣等の実施件数と参加人数についての重要達成度指標(KPI)を設定しており、2月末には昨年12月末時点の達成状況を公表した。

それによると、講師派遣等の実施件数は、1年間に1万回の目標に対して昨年12月末時点の実績は3,700回(37.0%)であった。講師派遣等の参加人数は、1年間に75万人の目標に対して、昨年12月末時点の実績は225,191人(30.0%)となっており、いずれも30%台に止まっている。

ただ、昨年12月末時点はJ-FLEC設立から8カ月間経過しているといっても、J-FLECが本格稼働したのは昨年8月で、講師派遣の申し込み受付を開始したのは同月下旬であった。実質的に4カ月間程度の実績と考えると30%台の達成率はそれほど低いわけではないだろう。ただ、今後は若干ペースを上げながら、引き続き講師派遣等を実施していくことが期待される。

ところで、大和総研でも高校生や中学生向けに「お金との付き合い方」に関する出張授業を実施している。近年のような2~3%のインフレが続いている状態では、インフレ率が預金金利を上回り、預金では実質的に価値が目減りしまうことから、投資も一つの選択肢となることを説明している。また、大和証券の協力を得て、株価の動きについて考えるグループワークを実施している。

グループワークでは、例えばアニメ・映画が大ヒットしたなど、何かイベントが発生した場合にどのような業種の株価に影響を与えるかを考える課題を出している。このような中高生にも身近なテーマで株式投資を体感することで、多くの生徒が興味を持って取り組めている。生徒からは大人の常識にとらわれない柔軟な発想で様々な回答が出てくる。中高生向けの出張授業では、いかに生徒に刺さるかが大事だと思っており、手ごたえを感じている。

加えて、1回の出張授業で教えられる知識は限られており、生徒が自分自身で考える力(思考力)を身に付けることも重要だと感じている。足元では米国のトランプ政権の関税措置等で株式市場の変動が大きくなっているが、近年の株価上昇や昨年から始まった新しいNISA(少額投資非課税制度)等で、若年層の間でも株式投資への関心が高まっている。一方で、著名人を騙ったSNS投資詐欺などのトラブルも増えている。インターネットで様々な情報があふれる中で、生徒たちには情報の正誤を判断する力を身に付けてもらいたい。

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希