高校生の投資への関心の高まりと課題

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2024年12月23日

いわゆる老後二千万円問題や近年のNISA制度の拡充などを背景に、若年層による投資が拡大しており、投資信託協会の調査(※1)によると、20代の投資商品の保有経験は2016年の13.3%から2023年には32.2%に大幅に増加している。そのため学校教育においても、資産形成について基本的な知識を教育することの重要性は高まっている。

このような中、2022年度から高校の家庭科では、家計管理において「資産形成の視点」に触れることが追加された。実際、家庭科の教科書では資産形成に関する記述が増えており、例えばある教科書(※2)では、各金融商品(預貯金、債券、投資信託、株式)のリスクとリターンの関係の図が記載され、貯蓄から投資への動きやNISA等の投資を促す仕組みについて記載されている。さらに、資金管理の方法として、必要資金は預貯金とし、余剰資金は収益性を重視し投資商品を選ぶなどの方法があることが明記されている。

ただ、高校の授業で教えられる資産形成に関する内容は、基本的なものにとどまっている。その背景として、全ての生徒に最低限必要な知識を提供するという学校教育の性質のほか、投資を行っている高校生の割合が限定的であるという事情があるだろう。Studyplusトレンド研究所の調査によると、我が国では、投資信託、外国株式、国内株式現物を保有している高校生の割合は、2023年時点でそれぞれ2.3%、1.2%、1.0%であった(※3)。

しかし、同調査によると高校生の70.9%は投資に興味があると回答しており、高校生の時点で実際に投資を開始するかはともかく、多くの高校生が投資に関する情報を求めているといえる。今後も学校での授業内容が基本的なものにとどまれば、他の経路から情報を得ようとすることが予想される。

若年層の間ではインターネットを通じた投資に関する情報収集が増加している。前記の投資信託協会の調査によると、20代が、「お金の話に触れた媒体」、及び、「お金の話に触れた媒体の中で一番良かったと思うもの/一番良さそうに思うもの」は、いずれも「動画サイト(YouTube等)の動画配信」が最多(17.3%、12.1%)である。

今後、高校生の投資への関心がさらに高まり、現在の学校教育で提供される内容よりも実践的な情報が求められるようになれば、インターネット等、学校教育以外の経路についても適切な情報提供のあり方を検討する必要性が高まるだろう(※4)。

(※1)投資信託協会「投資信託に関するアンケート調査報告書」(2016年、2024年)。
(※2)大修館書店『Creative Living:「家庭総合』で生活をつくろう』
(※3)Studyplusトレンド研究所「“金融教育”と“お金”に関する調査」(2024年1月25日)より大和総研推計
(※4)谷京・森駿介「ソーシャルメディア上の不適切な投資情報発信への対策」(2024年10月7日大和総研レポート)

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執筆者紹介

金融調査部

主任研究員 金本 悠希